2021.01.12
学びをはぐくむ 曽田照子

夢中を「見守る」子育て 第2回:「習い事に行きたくない」 教育家・小川大介さん

第2回 子どもが「習い事に行きたくない」と言うとき、どうしたらいいの?

子どもが「やりたい!」というので始めた習い事、それなのに「行きたくない」「行かなきゃダメ?」なんて言われたら、何と答えたらいいのでしょうか。教育家の小川大介先生に、習い事を通して子どもの育ちを見守る子育てのヒントをうかがいました。

「行きたくない」=「やめたい」ではない

子どもが「行きたくない」と言ったとき、親は「行きたいって言ったから始めたんでしょう!」と自動的に反応してしまいがちです。でも、ちょっと待ってください。「行きたくない」=「やめたい」ではありません。

子どもは「なんとなく嫌だ」という気分を口に出しているだけです。

子どもなりに今の自分の気分・状態を表現しているのですから、まずは、子どもの気持ちを詳しく聞き、一緒に考えるきっかけととらえて対応しましょう。

具体的な言葉としては「帰ってきたらお話をちゃんと聞くよ。いきなり休んでは先生も困るから、今日はとりあえず行こうか」でいいでしょう。もちろん、後で話をちゃんと聞くという約束は守らなければなりません。

そう言っても「嫌だ」と主張したり、黙ってしまったり、といった反応で子どもの苦しさが伝わってくる場合は、無理して行かせず、欠席させていいでしょう。そして「習い事に行くはずだったこの時間を、あなたのお話を聞く時間に変えようか」として、その場で話を聞きます。

「行きたくない」と言いだしたときは、習い事を続けるかどうかを議論するのではなく、子どもの世界で何が起きているかを聞くきっかけなんです。「この子と話をするための時間」ということを頭においておくこと。これが親の知恵ですね。

「何があったの?」で子どもの心を探る

習い事に行きたくない理由を聞くとき「どうしたの?」「どうして?」は禁句です。

小学校五年生以下の子は抽象化能力がまだ育っていないからそういった質問に対して、うまく説明できません。「どうしたの?」「どうして?」と聞かれると、子どもは追い詰められて「だって嫌なもんは嫌だもん」とか「行けばいいんでしょう、行けば」という返事が返ってきます。

質問は「どうして」ではなく「何があったのかな」と聞いて欲しいんですね。これがすごく大事です。

「何があったのかな」は「親としてあなたの気持ちを受け止める準備がありますよ」ということを示す言葉です。

「何が」と聞くと、子どもは「何ってわけじゃないけど……」と、話します

「お教室に行く途中で犬が吠えて恐いの」「後から入った◎◎ちゃんが私より先にあの曲を弾けたのが嫌だった」「コーチが先週、褒めてくれなかった」「リフティングがどうしても10回越えられない」「お友達は土曜日パパと遊んでいるんだもん……」

その子なりの、様々な事情があるわけです。習い事に行きたくない理由ではなく、全然違うことを言う場合があります。むしろその方が多いですね。なぜなら、子どもの心は、今はそっちに向かっているということだから。

親が子どもの世界で何が起きているのかを聞いていくと、かなりの確率で「やっぱり来週行く」というんですよ。もともと興味があって始めたのだから、「何があったの」とまるっと受け止めてあげることによって一瞬で変わります。

習い事そのものが嫌なのか、先生との相性が合わずに嫌になっているのか、見極めが難しいときは「いつも?」を聞くといいです。

「いつも先生が嫌なの?」「いつもじゃなくて昨日は嫌だった」「じゃ明日の先生はいいかもね」と言ったら「うん」と言うかもしれない。そういうやり取りが大切です。

明確に「嫌」が言えるのは素晴らしいこと

習い事を続けたくない理由をはっきり言えて、明確に「嫌だ」という意思表示があったときは、親としては「ちゃんと自分の意見が言えたね」と、自己主張できたことに対して褒めることがポイントです。

大人だって「いらない」と言うのは難しいですよね。嫌だと言える子は、拒絶できる力、意志がある。やりたいことはやれる子です。

「できなかった」ととらえずに、「やってみて、違うということがはっきりわかったんだね」と思えばいい。嫌いなことがわかったのですから、やめさせて、また新たに好きになれそうなものを見つけたらいいだけです。

やめていいというと「やめぐせがつくんじゃないか」と心配する親がいますが、やめぐせというのは、困ったときに、どうしていいか振る舞い方がわかっていないから、その場から逃げる、なしにする、という方法しか選べずに繰り返してしまう状態です。

「いらない」が言えたということは、「いる」も言える、ということを理解をして、本人にも伝えて、ひとつの自信にしてあげれば、やめぐせはつきません。

習い事のやめ方は、子どもの話の受け止め方とイコールです。

「忍耐力が身につかない」は昭和の根性論

「嫌なことから逃げるのは悪いこと」「忍耐力が身につかない」と子どもに苦難を乗り越えさせようとする親が多くいます。

イチロー選手や巨人の菅野智之投手など、親子で苦しさを乗り越えた成功例はありますが、ごく一部です。

苦しさを乗り越えて本当の自信につながるのか。確率的には「傷つくだけ」の方が圧倒的に多いです。

親の世代は「部活動でしごかれて強くなった」「ガマンして勉強して合格した」という体験をしている人も少なくありませんが、昭和・平成の根性論を続けるのはやめよう、令和ではアップデートしようということです。

今は社会が多様化して、ゲームだって遊びだって、本だって選べる。その環境で「とにかく耐えろ、ガマンしろ」というのは、子どもからの納得感を非常に得にくい。

ガマンさせるよりも「好き」「出来そう」と思っていることを、もっと続けさせ、育んで生まれる自信の方がはるかに力になる。

本人の中で「やれそう」と思って、ちょっと嫌なところを乗り越えた苦しさ、これは自信につながります。

でも「やりたくない、無理だ」という気持ちで頑張った先に出来るようになる確率は低い、だってやれるかどうかは本人が一番わかっているのですから。

よく批判される「我慢がきかない若い人」は、それまでの人生で我慢をしなかったのではなく、得意なことを育んでもらえず、自信が育たなかった人たちです。

「自分はこれがやれるんだ」という確たるものがあれば、簡単に投げないですよ、だってやれるんだもの。

やめたがるかもしれないという覚悟を

「どの習い事に連れて行っても、うちの子はやると言ってやりたがる。でもすぐに、『もういい』とか言う。やるって言ったんだから続けさせたい」という相談を、親からよく受けます。

こういうお子さんってその場の空気でやりたくなるんです。別に決意も何もしてない、その気になるんです。でもやってみたらイマイチしっくりこない。だから「もういい」と言う。それはそれで、子どもなりに適切な判断をしているわけです。

習い事の軸は、子どもの育ちです。

その習い事をさせる、と決めたとき、親は「親として応援しますよ」ということを選択しているんです。

だから「やりたい」と言っていた子が「やめたい」と言いだしたとき、「やりたいと言うからやらせてあげて、月謝も払ってきたのに……」という思い方をいかにしないかが大切です。これは瞬間的にはできないので、常に「今はいいけれど、いつかやめたがるかもしれない」という心の準備をしておく必要があります。

選択肢はひとつではありません。あれこれ触れさせてあげながら、その子にとっての大切な何かを見つけてあげる。これは絶対に大事なことです。

子どもがやりたいと言えばまず体験させてあげる。それで、しばらく続けてみて「やめたい」と言ったら「じゃあどうしようか」という会話ができたらいいですね。

金銭的な余裕や聞いてあげる時間的な余裕がよほどないと、子どもが興味を持ったすべてをやらせてあげることなど、普通はできません。何をするかは選ぶことになります。そして、たくさんの選択肢の中から、好きになりそうなこと、夢中になりそうなことを見つけたら、それを一生懸命やる。

それでも3ヶ月後に「やっぱり嫌だ」と言うかもしれない。

子どもって3ヶ月も経てば、ものすごく成長しています。「前には見えていなかった世界が見えるようになったんだな」という前提で、「何があったの?」と、その子の話を聞いてあげるといいですね。

習い事をやめたいと言われたときのポイント

  • 行きたくない=やめたい、ではない。まずは子どもの話を聞こう。
  • 昭和・平成の根性論は捨てて、子どもの好き・得意を伸ばす。
  • 子どもの興味関心が変わるのは成長の証。


プロフィール:小川大介(おがわ だいすけ)

教育家、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。京大法卒業後、受験指導、幼児期からの才能発掘、親子関係カウンセリングなど幅広く活動。6000回以上の学習相談、子育て相談で培った洞察力と的確な助言が評判。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』など著書は20冊以上。新刊「自分で学べる子の親がやっている『見守る』子育て」が好評発売中。見守る子育て研究所 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」

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曽田照子
曽田照子

ライター。広告制作会社を経て20代前半でフリーに。「親から子への言葉かけ」をメインテーマに、書籍やWEBで書いています。小学5年生で手芸クラブに入部、フェルトをちくちく縫ってマスコット人形を作っては周囲にプレゼントをしていました。今は和裁を習っています。娘3人+猫の母親です。

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