コロナで変わった? 子どもの習い事と生活 第3回 「好きなこと」の探究
コロナがもたらした新しい生活様式の中にあっても、子どもたちは日々たくましく自分の個性を発揮し、成長しています。202人にご回答いただいたアンケート結果から、第3回は2020年春のコロナ休校期間後に始められた、子ども主体の学びについてお届けします。2021年1月8日からの緊急事態宣言では、学校は休校になりませんが、参考にできることがあると思います。
自分の好きなことに没頭する時間ができた
現代の子どもは多忙です。「子どもの好きなことを思う存分させてあげたい」と思いながらもなかなか出来ずにいたけれど、2020年春のコロナ禍による休校という思わぬ形でかなったという家庭も多いのではないでしょうか。「みらのび」アンケートでも、40.6%の人が、コロナ以降、お子さん自身が好きで始めたことが「ある」と答えています。
子どもたちは今、どんなものに興味を持ち、どんなことを始めているのでしょうか。
令和の子どもらしい興味関心事とは
「お子さんはどんなことを始めましたか」の問いに対する回答で目立ったのが、ICTを活用した活動です。
●メルカリ でいらなくなったおもちゃなどを(親のアカウントで)販売したり購入したりするようになった。
●オンライン英会話。ゲームを通じて学ぶタイプのもので、のめり込んだ。リモートで友達もできて、とても楽しそう。
●オンライン講座で知り合った友達とSkype(スカイプ)でつなぎながら、ゲーム「Minecraft(マインクラフト)」で建造物をつくるようになった。
●スマホでの動画編集。TIKTOKやYouTubeを見る機会が増えて興味を持った。
●プログラミング。コロナで時間がありすぎて、子ども用のパソコンを与えたのがきっかけ。
ダンスなどの表現活動や、絵、工作などの作品をSNSで発信するのにはまった、という人も複数いました。
●親のサブアカウントという形で、子どもの作品を発表するインスタグラムアカウントを作成し、作品を載せています。タグを通じて同じキャラクターが好きな同世代のお子さんと作品を見たり、コメントでやりとりしたりと楽しんでいます。時代だなあと思います(子どもが「デジタルお絵かき」を始めた)
一方、こんな変化を語ってくれた方もいました。
●今までYouTubeなどの動画を見せてなかったが、テニス動画を見ていいよ、と許可したら一気にのめり込んでいった。(子どもが「テニスの自主練」を始めた)
●ユーチューブ視聴時間が増えた。気がつくと学習系も視聴していた。(子どもが学習・クイズ系動画の視聴を始めた)
それまでインターネットの活用に慎重だった家庭も、コロナ禍をきっかけに少しずつ利用の範囲を広げている様子が伺えます。
身近な実体験から生まれる探究心
●興味を持った内容についてノートに書いてまとめていた。
●外出自粛要請への反発からコロナについて猛烈に調べ、ノートにつづっていた。
●ラグビー 自学ノート。岩田かおりさんのメソッドによる「天才ノート」がきっかけになった。高学年になり、コロナで自分の時間が増えたことで、自学ノートをはじめた。学校が再開になった今も続けており、ノートは6冊にもなった。
知識やスキルの習得そのものよりも「学び方を学ぶ」ことが重視される時代です。自学ノートの実践からは、子どもたちがこれまでに身につけてきた「学ぶ力」が、自分の好きなことを探究するために生かされていることがわかります。
また、日常生活の中に探究のきっかけを見つけた子どももいました。
●近所のお花屋さんと仲良しになり、お花を育てたり生けたりするようになった。
●自粛期間に家の模様替えで、子どもの部屋を作ったら、その後もインテリアや模様替えを子ども自身が楽しんでいる。掃除もするようになった。
●すごろく(どこでもドラえもん日本旅行ゲーム)に家族ではまった。
●会えない期間に友達に手紙を書き始めた。
活動の制約が多かった時期だからこそ、地域で新しい関わりが生まれ、家族や友達といった身近な存在に目を向ける機会にもなっていたようです。
親が趣味や仕事に打ち込む姿が、子どものきっかけに
友達や親など、周囲の人の影響で興味関心を広げたという声も多く集まりました。
●保育園のお友達にピアノが上手な子がいるそうで、「自分もやりたい」とピアノを始めた。
●「論理国語ドリル」を友達がやっているのをみて興味を持った。
●友だちに影響されて、「やりたい」とサッカーを始めた。
●親がコロナをきっかけにウクレレを始め、子どもも興味を持った。
●コロナ前から母親の漫画「ちはやふる」を読んで百人一首に興味を持っていた。休校中に、母親の持っていた札と読みのCDを発見し、兄弟で毎日対戦していた。
●野球。父親が会社の同好会で野球をしていて、家にバットがあった。
●父親の持っているギターを借りて自主練を始めた。
リモートワークが浸透し、親が仕事する姿を見る機会が増えたのも、コロナ禍の大きな変化です。
●私が仕事で英語を使っているのを横でみていて興味をもち、英語を始めた。
家族と一緒にいる時間が増えたコロナ休校。親が趣味や仕事に打ち込む姿は、それまで見たことのない興味深いものとして、子どもたちの目に映っていたのではないでしょうか。
時間を気にせず、没頭できる喜び
長期休みの定番ともいえる、「読書」はやはり人気です。
●「日本の歴史」全巻を一気にそろえた。休校中、繰り返し読んですっかり歴史好きに。
●長時間の読書。日本の歴史や偉人伝シリーズの漫画、ノベルなどを集中的に読めた。
なぜか歴史物にはまったお子さんが多いのが印象的でした。実際、休校要請前と比較して6倍の売り上げを記録した「ねこねこ日本史」(実業之日本社)のような例もあります。長い時間をかけて読む歴史本は、ぴったりだったのかもしれませんね。
- これまで取り組んできたゲームのプログラミングではなくて、より本格的な言語でのプログラミングに挑戦したいと言い始めた。
- レゴ® の作品作りを深めた。
読書以外にも、じっくり時間をかけて取り組みたいものを始める格好の機会であったことがわかります。
「好きなこと」の種をさりげなくまく
ここまで、「好きなこと」を探究している子どもたちの姿を見てきましたが、「うちはだらだらとネットかゲームばかりで・・・」という家庭も、実際は多いのではないでしょうか。
Aさんもそんな一人です。「コロナ休校中はゲームばかりになってしまった」というAさん。夏休みに入るタイミングで、「夏休み中に何か新しいことを挑戦しよう」と子どもに持ちかけました。
「毎日、具がわりのお味噌汁を作ることを夏休みのひとつのテーマとして取り組みました。
その後、秋には自分の誕生日のディナーを、メニュー選びや買い物、調理まですべてをひとりで主体的にやるところまで成長しました。」(Aさん)
自粛期間中をきっかけに、継続的なサポートをすることによって、成長につながっていることがよくわかります。
お子さんが歴史の漫画にはまったというBさんは、
「歴史の漫画は、目に留まるところに置いておきました」とのこと。「これを読みなさい」と押しつけるのではなく、さりげなく置いておくのがポイントのようです。
Bさんのお子さんは他にも、好きな本の書き写しを始めています。
「子どもが本の中の好きなところを話している時にリアクションを大きめにして、『お母さんにも好きなところを教えて』と伝えたところ、ノートに書き出しました。」(Bさん)
自由な時間は子どもにとって何よりもの宝物。しかしコロナ期間は、行動面でさまざまな制約がかかっていました。それにも関わらず、子どもたちの中からこれだけ多様な探究が生まれたことには、大きな希望を感じます。
子どもの興味関心は、多様な現れ方をします。自分から好きなことを見つけて生き生きしたときは大きなチャンス。大人のちょっとした働きかけで、さらに自分から探究する力が成長していくようです。
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ライター mugichocolate株式会社 元中学校国語教師。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことをきっかけにライター、編集者として活動開始。幼い頃から無類の本好きで、小学2年で夏目漱石にはまる、やや渋好みの子どもでした。今でも、暇さえあれば本屋巡りをするのを楽しみにしています。