2021.01.14
習い事最前線 五嶋正風

世界で活躍できるリーダーへ 挑戦と点火の機会を提供「デルタスタジオ」

キッチンカーの中からお客様に商品を渡す子どもたち

ワクワクするビジョンを描き、人を巻き込んで実現する--。そんなグローバルに活躍できる人材を育てるためのプログラムを提供するのが「デルタスタジオ」(東京都渋谷区広尾)です。社長の渡辺健介氏はアメリカのイェール大学やハーバードビジネススクールで学んで実感した、日本の子どもに不足する挑戦と点火の機会を、2つのプログラムに込めました。

体験型プログラムで好奇心と才能に火を点ける

「デルタスタジオ」には、子どもたちの好奇心を広げて、自主性を伸ばす2つの小学生向けプログラムがあります。一つは、医療や建築、映画などの仕事に関する幅広い体験型の授業を通して、好奇心と才能に火をつける「点火」というプログラム。もう一つは、企画を立てるところから自分たちで挑戦する「デルタチャレンジ」というプログラムです。どちらも一つのテーマに関して、約2カ月間かけて掘り下げていきます。

「点火」のプログラムの一つ、「ビジネスの点火」を見学しました。このプログラムでは本物のキッチンカーを借りて、街頭で飲食物を販売します。何を、いくらで、どのようにプロモーションして売るのか。子どもたちが考え、話し合って意見をまとめて、実行します。

お知らせボードを身につけて、お客様に商品をアピールする

見学した日はキッチンカーで実際に街頭販売をする日でした。小学校低学年クラスの売り物はギョーザの形をしたアップルパイ、高学年は抹茶汁粉です。キッチンカーはJR恵比寿駅にほど近い、民家のガレージに置かれています。駅近とはいえ少し裏に入った場所で、通行人にアピールしないと気づいてもらえなさそうです。子どもたちは事前に用意した飾り付けや、サンドイッチマン用のお知らせボードを準備。商品説明の口上を練習していました。

 キッチンカーの中ではパイ、トッピング、容器を、どんな順番に並べるかを相談しています。先生は「こうしなさい」と指示するのではなく、「どう並べるのが効率的かな?」と、子どもたちに問いかけます。子どもたちは意見を出し合いながら、配置を決めていました。

お客様の様子を見つめる子どもたち

この「点火」は、日本の子どもに不足する要素を補うためのプログラムです。それは「子どもの好奇心と才能に火をつける機会」だと、渡辺氏は言います。

点火では、建築、エンジニア、漫画、ファッションなど様々な仕事の本質を、それぞれ約2カ月かけて体験します。デルタスタジオのプログラムはいずれもそうですが、実際に体験すること、そして子どもたちに問いかけ、自発的な行動を促すことを重視しています。ビジネスの点火プログラムでは冒頭、自分たちが売りたい商品について、子どもたちに意見を出してもらいます。次にお客さんは何を求めているのか、街頭でインタビューするのですが、先生は「インタビューしよう」と指示はしません。そのかわり、「商品は誰が買ってくれるのかな?」と、子どもたちに問いかけます。

「買ってくれるのは自分ではなく、お客さん。ではどんな人がお客さんになってくれるのか、何を求めているのかを知る必要がある。このように問いかけていくと、では街頭で声を聞いてみようという行動につながっていきます」(渡辺氏) 

メニューを見やすく大きくして、抹茶汁粉のトッピングをオススメする子ども

偉人の伝記を学び、点火の機会を知る

また点火プログラムでは、それぞれの分野の偉人の伝記を学び、それらの人たちにどんな点火の機会があったのかを振り返ります。ビジネスの点火では、プログラムの最後にスティーブ・ジョブズの伝記を学び、自分のビジネス体験と重なる部分を探しました。どの点火プログラムでも偉人の伝記には触れますが、タイミングはそれぞれ違います。

「例えばエンジニアでは、エジソンが試みた実験を、子ども時代から順に追体験していきます」と渡辺氏。

偉人の伝記を織り込む点火プログラム。そこには渡辺氏が26歳の時に留学した、ハーバードビジネススクールでの経験が影響しています。渡辺氏は1976年生まれ。父親のアメリカ赴任に伴って現地の公立中学校に“放り込まれる”経験をしました。その後イェール大学に進み、大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職。同社からの派遣で、2002年にハーバードビジネススクールに入学しました。

「ビジネススクールでは、限られた人生の中であなたは自分の力を何に使うのか?と、常に問いかけられました」(渡辺氏)

それを見出すヒントにしようと、渡辺氏は何十人という偉人の伝記を読みました。そこで発見したのは、偉人によって色々なパターンはあるものの、必ず才能や好奇心に点火する、きっかけとなる出来事があるということでした。そしてそのタイミングは幼少期であることが多かったのです。

「ライト兄弟では、父親がたまたま買ってきた竹とんぼのようなおもちゃが、点火のきっかけでした。それを飛ばしたり分解したりして遊んだことから、空への興味を深めていったのです」

みんなで協力して、真剣にスイーツを作るもっと若い頃に出会いたかった

一方で当時26歳だった渡辺氏は、もっと若い頃に点火につながるような出来事に出会いたかったと感じました。例えば渡辺氏が何かをきっかけに建築に興味を持ったとしても、20代半ばからでは進路変更はなかなか難しいからです。

「数多くの偉人伝に触れ、それぞれの点火のストーリーを知るうちに、日本の子どもたちに点火のきっかけを作ること自体が、自分のライフワークになると思い始めました」(渡辺氏)

こうして渡辺氏は、この点火とデルタチャレンジという2つの教育プログラムを日本の子どもに届けようと、2007年にデルタスタジオを起業しました。

「自分の頭で考えて挑戦すれば、子どもたちはどんどん変わっていく」と語る渡辺さん

ハーバードビジネススクールでの衝撃体験

もう一つのプログラム「デルタチャレンジ」の誕生にも、ビジネススクールでの経験が影響しています。「クラスメイトに、インドの貧しい農村出身の学生がいました。彼のアレンジで、農村の視察などインドを訪れる旅行に行きました」

農村視察から帰るバスの車中で、数人のクラスメイトがこんなことを話し合っていました。

「校舎さえ建てれば、政府が教師を派遣してくれるらしいよ」「だったら、お金を集めて建てようよ」

その後、クラスメイトたちはビジネススクールの厳しい勉強をこなしながら、夜にはパーティーを楽しみながら、さらには就職活動もしっかりこなしつつ、インドの農村に校舎を建てることを実現しました。

「日本の若者ではなかなか見られないようなリーダーシップとスピード感ある挑戦ですが、それを彼らは、学業や就活の片手間に、肩肘張らず、楽しみながらやっていたのです。彼らは挑戦することが習慣になっています」

能力意欲の差ではない 場数を踏んでないだけ

だがそれは、日本の若者に意欲や能力が足りないせいではないと、渡辺氏は説きます。

「アメリカの子どもは小中高、さらに大学と、リーダーシップを発揮すればそれを評価されます。その結果、幼少期から自然と挑戦の場数を踏んでいます」

そうした積み重ねの差が、20代になって大きな違いとなってくるのだと、渡辺氏は言います。

ワクワクする目標を、自ら考えて挑戦

デルタチャレンジは、ワクワクする目標を自ら考えて挑戦し、その過程で浮き彫りになる各自の強み・弱みが評価される場になっています。子どもたちは「自分たちで寄付先を決めるチャリティーオークション」「外国人に日本の魅力を知ってもらうおもてなしツアー」「予算2万円で最高の思い出を作る日帰り旅行」などのプロジェクトを、約2カ月かけて企画、実施します。

その過程で子どもたちは、「意見にはその根拠を考えること」「アイデアを出す時は広げて、絞る」といった思考力、発信力やリーダーシップを学んでいきます。

デルタチャレンジの最後には、担当の先生から子ども1人ひとりへフィードバックがあります。プログラムの過程で担当の先生は、子どもたちの「どんな時に、どのような行動を取り、その結果どうなったか」を克明にメモに残します。メモを元に作られたたたき台に他のスタッフもそれぞれ気づきを追加し、子どもへのフィードバックがまとめられます。

よいところや課題を子どもにフィードバック

フィードバックには子どもの能力や志向が、レーダーチャートで示されます。その項目は「リーダーシップ」「論理的思考力」「創造的思考力」「コミュニケーション力」などです。

「弊社は企業の人材育成にも関わっていますが、このような社会で必要とされる力は、まだ柔軟で吸収力のある幼少期のうちから身につけることが極めて重要です。よいところ、課題のあるところ、うまく伝えれば子どもたちはすぐに変わっていきます」(渡辺氏)

このようにデルタチャレンジには、日本の子どもに不足がちな、挑戦の場数と成長のための評価が織り込まれているのです。

自分たちで商品から企画し、お金を稼ぐという貴重な体験をした

得意なことを見つけることで、自信がつく

デルタスタジオのプログラムは、子どもたちにどんな変化を起こすのでしょうか。小学校5年生の岡田万次朗君は、1年生からデルタスタジオに通っています。これまでで「点火」の、マンガのプログラムが面白かったと話します。ドラえもんの秘密道具を自分で考案し、8ページのマンガにまとめ、本物の単行本そっくりの冊子をつくりました。また藤子・F・不二雄さんの伝記からも学んだと話します。

「藤子さんが子どもの頃、幻灯機を作って夢中になったことを知りました。それなら自分も作ってみようと挑戦し、小学校の作品展に出品しました」と、岡田君。

幻灯機はエピソードを紹介しただけで、それを作るところまではプログラムには含まれていません。プログラムで学んだことが、岡田君の好奇心に火を点けたということでしょう。

またある女の子は、入ってきた頃には手を挙げて発言などとてもできない、シャイな子でした。それが次第に、自信を持って自分の考えを表明できるように変わっていきました。

「その子はCMのストーリーを考えたりすると、とても面白いアイデアを出します。それを聞いた周りの子どもや先生は、○○ちゃんすごい! と賞賛します。学校ではなかなか評価されることのないクリエイティブな一面を認められた経験が、彼女の自信につながっていったのだと思います」(渡辺氏)

学校では、控えめでおとなしいと見られていた子どもが、デルタスタジオで色々なプログラムを体験するうちに、自分はこれが得意、面白いという分野を発見し、それが自信につながるのです。点火のプログラムが多彩なテーマを用意している理由はここにあります。緊張した一日を振り返って、あいさつ。お客様から拍手がわき起こり、ホッとした笑顔がこぼれた

いろいろ試して没頭できることを見出す

「プログラムで取り上げている職業が、将来の仕事に直接つながらなくてもかまいません」と、渡辺氏は言います。ただ、多様なプログラムで色々な“筋肉”を試すうちに、これなら没頭できる、これなら負けないと思える分野を見出すことは、その子の自己肯定感を大いに高めてくれるはずだと言います。「それは向いている職業を見出すこと以上に、人生に必要なものではないでしょうか」

得意なこと、熱中できることを見出し、自己肯定感を高めていく点火。挑戦の場数を積みながら、思考力やリーダーシップを磨くデルタチャレンジ。2つのプログラムを経験した子どもたちは、日本を飛び出し、世界で活躍できるリーダーとなることでしょう。

写真撮影:篠田英美

教室情報

デルタスタジオ

住所:東京都渋谷区広尾5−21−2 長谷部第2ビル1F

※点火とデルタチャレンジを平日に毎週受講する平日毎週コースと、週末に隔週で受講する週末隔週コース、主に春休みや夏休みに受講する1回完結コースがある。1回完結コースはプログラムによって異なる。

※授業料は平日毎週コースが月額2万5千万円(税別)、週末隔週コースは月額1万5千円(同)

五嶋正風
五嶋正風

1969年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。新聞記者、人事専門誌編集者を経てフリーライター。趣味はロックバンドとウインドサーフィン。子どもの頃は、ミリタリーなプラモデルにハマってました。日本の軍艦やドイツの戦車の機能美がカッコいいと思います。

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