「その言い方NG?OK?子育てのコトバ」第3回:「クリエイティブな力」をのばす
第3回:「クリエイティブな力」をつぶす言葉/伸ばす言葉
今回は「クリエイティブな力」について考えてみましょう。アイデアを思いつく発想力や、それを伝える表現力、カタチにする創造力など、クリエイティブな力は、未来を切り開く原動力です。子どものクリエイティブな力をのばすには、どんな風に接したらいいのでしょうか?
①子どもが絵を描こうとしているとき
NGワード:「何でも自由に描こう!」
子どもは生まれつきクリエイティブだから、自由に書かせてあげればどんどん広がるはず、と思う親御さんもいるでしょう。
もちろん「よーし、◎◎を描こう!」と張り切る子もいます。でも……大きな白い画用紙を目の前にしたら「何を描いていいのか分からない」と途方に暮れてしまう子も少なくありません。
だからって「うちの子クリエイティブじゃないのね」なんて悲観することはありません。
大人だって「全部自由にやってごらん」ってやりにくいのですよね。
例えていえば「晩ご飯どうしよう?」と聞いても「なんでもいい」しか返ってこないと、どうもメニューが決まりにくいのと同じです。
「寒いから温まる料理がいいな」とヒントをもらえれば「おでんにしようかな、ロールキャベツやシチューもいいな」といくつか作りたいものが浮かんでくるのに……。
こんなふうに、ある程度のテーマや制約を与えられてこそ、クリエイティブの力は発揮されるのではないでしょうか。
「自由に」と放り出さずに、ちょっとしたヒントを与えてあげましょう。子どもはそれを手がかりにどんどん発想を広げていけます 。
例えば画用紙に1本の線を引いて……
OKワード:「これ、何に見えるかな?」
「棒」「ありさんの道」「髪の毛」「刀」「地面、お花がでてくるの」……子どもによっていろんな答えが出てくるでしょう。
ヒントは、○や□などのかんたんな図形のほか、「好きな乗り物」「全部の色を使ってお花を描く」「理想のお子様ランチ」など、 お題やテーマでもかまいません。
親は子どもの発想を楽しみながら「じゃあそれを描いてみようか?」とうながしてみましょう。
自分ではなかなか描き始めることができない子だけでなく、「よーし、◎◎を描こう!」と張り切るタイプの子に対しても、発想のトレーニングとして有効です。
ゼロから「1」を生み出すのは並大抵ではありません。でも、「1」を手がかりに、2や3にしていくのはそれほど大変ではありません。
まずはヒントをきっかけにして、クリエイティブな力を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
②子どもが絵を描いているとき……
NGワード:「空は青でしょ?」
さて、親が画用紙にサッと横に引いた線「これ何に見える?」と問いかけられて「水平線に見える」と答えた子が、いきなり鮮やかなピンク色やあり得ない緑色で塗りだしたら……
思わず「空は青でしょ?」って言いそうになりませんか。ツッコミたくなるのは私だけではないですよね?
ちょっとだけ、ガマンしましょう。大人には不自然に見える色の空でも、いろんな可能性があります。
いつか見た夕焼けの色を再現しようとしているかも知れません。
頭の中で「お空の世界には森があって……」と、オリジナルの物語を作り出しているのかも知れません。
太陽のまぶしさを表現しようとしているのかも知れません。
どんどん色が変わるのは描きながら時間の経過を追体験しているのかも知れません。
さっきは空に見えたけど、やっぱり違うな、と描きたいテーマが変わったのかも知れません。
いろいろ想像してみましたが、どれもまったく的外れかも知れません……。
私たちがイメージする子どもの絵は、空は水色で、太陽は真っ赤、雲は白……です。
そんなよくある「子どもらしい絵」を描いてくれると何となく安心してしまいがちです。
でもそれって、子どもは自分の描きたい者を描きたいように描いているのではなく、大人のイメージする「子どもの絵はこういうもの」という固定観念をなぞっているだけの可能性もあります。
決まった枠組みに収まりきらないものこそが、クリエイティブな力ではないでしょうか。
分かりにくい、意味不明の絵でも、変な色使いでもいいのです。いや、むしろその方がいいのかも知れません。描かれた世界はその子のオリジナルのイメージです。
何を描いたのか、聞いてみましょう。
OKワード:「これはどんなシーン?」
親が子どものイメージを楽しむ余裕を持って受け止めることが、「自分の感性を自由に伸ばしていいんだよ」という無言のメッセージになります。
③オンライン学習で家庭教師の質問に答えられずモジモジしている子に……
NGワード「早く答えなさい」
親は子どもが質問にてきぱき答えられないと不安になってしまうものですが……じっくり考えて答えを出そうとしているだけかも知れません。
家庭教師の先生もそれがわかっていて、答えを待つ姿勢でいるという可能性もあります。
そこへ、親が「早く答えなさい」と割って入ってしまうと……子どもの思考も、先生の待つ姿勢も、台無しにしてしまいます。もったいないですね。
近い未来、子どもたちが大人になる頃に、AIの実用化がさらに進んでいけば、AIが得意な計算や統計、単純な事務作業はどんどん人間の仕事ではなくなります。
その時代に必要とされるのは、AIと競い合うのではなく、それをどう使うか、使って何をするか、といった、クリエイティブな力です。
じっくり考える、自分で答えを出す、という体験を積み重ねることで、伸ばしていけるのではないでしょうか。
では、なんと声をかければいいのか。
私は何も言わなくていい、と思います。
OKワード「……(黙って見守る)」
今回のケースでは画面の向こうにいるのは家庭教師の先生です。先生と子どもの間の信頼関係を壊さないように、親は口を挟まずに見守るのがいいでしょう。
子どもが助けを求めてきたときだけ、手を貸せばいいのです。

ライター。広告制作会社を経て20代前半でフリーに。「親から子への言葉かけ」をメインテーマに、書籍やWEBで書いています。小学5年生で手芸クラブに入部、フェルトをちくちく縫ってマスコット人形を作っては周囲にプレゼントをしていました。今は和裁を習っています。娘3人+猫の母親です。