2021.02.15
学びをはぐくむ 北川サイラ

コロナで募るイライラ!親子のためのアンガーマネジメント

オンライン取材に応えてくれた小尻美奈さん

新型コロナウイルスによる2度目の緊急事態宣言で外出自粛が続く中、子育て中の親にとってもイライラが募りやすくなっています。日本アンガーマネジメント協会認定のアンガーマネジメントコンサルタントで、2児の母でもある小尻美奈さんを招いて、私たちを悩ませる怒りについて考えます。
怒りをコントロールしながら子育てをするための秘訣は?小尻さんに聞いてみました。

私たちはなぜイライラするの?怒りの「メカニズム」を知ろう!

――「アンガーマネジメント」とはどういうものでしょうか?

アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれた、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングのことです。日本でも広がっており、2011年設立の「日本アンガーマネジメント協会」では企業や学校、個人向けに講習を開いています。これまで約140万人が受講し、練習を積み重ねていけば怒りのコントロールがどんどん上達していきます。

――アンガーマネジメントに取り組めば「怒らない人」になる、ということでしょうか?

「怒りがなくなる」「イライラがゼロになる」と思われがちですが、そうではありません。子育てでも善悪の判断や社会のルールを伝えるために叱ることもありますよね。子どもを危険から守るためには怒りを表現することだってあります。怒りも私たちにとって自然な感情のひとつなのです。イライラは身近な対象ほど強く感じ、力関係の強い人から弱い人へ向かうといった性質があります。そのため親子関係ではイライラが生まれやすいんです。でも感情的になって後から「あんなふうに怒らなければなぁ」と思ったり、怒りたかったのに我慢して「あのとき言っておけばよかった」と後悔したりすることもあります。

協会ではアンガーを「怒り」マネジメントを「後悔しない」と定義しています。後悔しないために、自分にとって怒る必要のあることとないことを見極めて上手に怒れることを目指します。 

――昨春の緊急事態宣言のとき、「イライラすることが増えた」という親の声を聞きました。実際はどうだったのでしょうか?

ステイホームが長期化する中でDVや児童虐待などの懸念がありました。協会も緊急事態宣言が出た際、イライラで悩む人のために無料のオンライン相談を開きました。3週間で90件の申し込みがあり、その多くが子育て中のお母さんたちでした。「子どもが感染しないか」「子どもが家にいる状態で仕事(リモートワーク)に集中できない」「子どもについ手がでてしまう」「離婚しそう」など、これまで経験したことのない不安感や恐怖感がありました。あるお母さんは、保育園に子どもを預けることができず、子どもとずっと家にいることで気が休まらなくて円形脱毛症になってしまいました。

親にも自分の時間は必要なので、相当ストレスだったと思います。「不安」「疲れた」「辛い」「悲しい」などのマイナス感情がたまっているほど怒りやすくなるので、コロナ禍では多くの人にとってイライラが募りやすい環境だと言えます。 

――そもそもイライラするのはなぜでしょうか?

怒りの正体は特定の「誰か」「出来事」のせいだと思いがちですが、実は自分の内側に抱えている「べき」にあります。自分の理想や、こうしてほしいのにといった欲求や、自分が「あたりまえ」「普通」だと思っている価値観が裏切られたときに怒りが生まれます。自分がどんな「べき」をもっているのかを知ることで、自分がいつどんなときに怒りを感じるのかが見えてきます。

例えば勉強に対して「べき」がある親は、「宿題はするべき」とイライラし、自分の思う通りにならないと子どもに「なんでこれくらいもできないのか」と怒ってしまいます。「べき」の程度も様々で、その人が育ってきた環境や経験によって異なります。

「イライラあるある」3選と対処術

コロナ禍において、親はどのようなときにイライラを感じることが多いのでしょうか?親が悩む「イライラあるある」を3つ紹介します。それぞれのイライラとの向き合い方は? 

ステイホームで家事が増えてイライラ! 

「コロナ後は外食する機会が減りました。子どももずっと家にいるので食事の支度が増え、1日中ずっとキッチンに立っている気がします」

仕事や家事に子育て…親はやることがいっぱいですよね。でも「やらない」と決めることも大切です。特に多くの親が悩んでいるのは「毎食作るべき」。家族のために栄養バランスを考えて作ることはすばらしいことです。だけどそれがストレスになって子どもに怒りをぶつけて、自分が苦しむのであれば、それは不毛な「べき」なんです。子どもが毎食作ってと言っているわけでもないし、まわりがそれを求めていないということもあります。お総菜や冷凍食品を使ったり、テイクアウトしたり、ウーバーイーツだって今はありますよね。「母親業がちゃんとできていない」と思わなくていい。自分を苦しめるべきは手放し、やらない自分を認めてあげてください。

夫婦間で価値観が違ってイライラ!

「夫がコロナ禍でも子どもを外に連れ出して遊びに行きます。私は家の中で遊んでほしいと思っているのですが…価値観の違いでよくぶつかります」

怒りを感じたら、三重丸をイメージしてください。真ん中から外側に向かって、「①許せる」「②まぁ許せる」「③許せない」の3つの円があります。「①許せる」は自分が大事だと思っているべきのことで、「理想」としている価値観を指します。

夫婦間でもこの境界線は異なるため、何が許容できて何ができないのかを整理する必要があります。そのうえで、相手に「子どもにはなるべく家の中で遊んでほしいけど(①)、人が少ない公園で遊ぶのはしょうがないよね(②)。でも電車に乗せてまでテーマパークなどに行くのは止めて欲しい(③)」と具体的に自分の境界線を伝えてみてください。

「普通はこうでしょ」と自分のべきを押しつけ、「言わなくても分かるよね」と思い込んでしまうと喧嘩になってしまいます。許容範囲のことであれば怒らない。境界線が機嫌でぶれないようにし、「②まぁ許せる」の範囲を広げる努力をしましょう。

きょうだいげんかが止まなくてイライラ!

「家にいる時間が増え、きょうだいげんかが増えてしまった。けんかを止めるために叱るのも疲れてきてしまいました」

親には「あなたが悪い」「こっちが悪い」と裁くのではなく、まずは子どもの言い分を聞いてほしいです。聞かずに決めつけてしまうと、「自分のことを分かってもらえない」と子どもは傷ついたり、不信感や反発感を抱いたりしてしまいます。

テレビのチャンネルを勝手に変えられてけんかをするきょうだいがいるとします。「2人ともいいかげんにしなさい」「お兄ちゃんなんだから譲ればいいでしょ!」と反射的に怒ってはいけません。「どうしたかったの?」「どんな気持ちになったの?」と2人に同じ質問をします。「勝手にチャンネルを変えられて悲しかった」「番組がつまらなくて嫌だったから変えたかった」。怒りの感情に潜んでいる子どもの欲求や気持ち、つまり相手に一番知ってほしかったことを聞き出してください。そうすることで、子どもは自分や相手の考えや気持ちを知ることができます。

上手に怒るための5つのステップ

子どもたちに怒りとの向き合い方を教える小尻さん

「頭ではわかっていても、ついカァーッとなってしまう…」。こんなときはどうすればいいのでしょうか?親子で取り組めるアンガーマネジメントの「コツ」を5つあげてもらいました。

①6秒マジックで理性が介入するのを待つ

カァーッとなるときはまず「6秒」待ちましょう。100から3ずつ引き算したり、怒っていることを紙に書き出してみたり。6秒の間に理性が働いて衝動的に怒りをぶつけることを防ぐことができます。まずは1カ月間意識して怒りを反射しない習慣をつくりましょう。

②その場を離れてクールダウン

その場を離れてタイムアウトするのも有効です。親が怒った顔でその場を去ると、子どもは不安になって追いかけて、怪我や事故につながる可能性もあります。離れるときは「隣の部屋に行くね」と、相手に一言声を掛けてから離れるようにしましょう。

③怒りに温度をつける

心の中で怒りに温度(1~10)をつける方法です。「1」は軽いイライラで、「10」は人生最大の怒り。数値化することで客観視することができ、「子どもの片付けに関して怒りやすい」など、自分の怒りの傾向を知ることができます。親子で温度を伝え合うのもおすすめです。子どもは親がどれくらい怒っているのかを知ることができ、親も「この子温厚だと思ったら結構怒っていたんだ!我慢していたの!?」と驚くことも…。

④怒るときは具体的に「リクエスト」する

「何でできないの?」ではなく「本当はこうしてほしかった」という欲求を子どもに伝えてみてください。「私」を主語にしたリクエストを届けます。「しっかり」「きちんと」などの抽象的な言葉や「絶対」「必ず」などの強すぎる表現も使わないように。「ちゃんと片付けて」「いつも約束守らない!」ではなく、「床のおもちゃを全部カゴに入れてね」「約束が守れなかったのは今週で2回目だね」と具体的に伝えるのがコツです。

⑤3つのルールを守る

子どもを怒るときに守ってほしいのが、「自分を傷つけない」「人を傷つけない」「物を壊さない」の3つです。身体的な暴力や「あんた何もできない、バカなの?」などの言葉は、子どもの尊厳を傷つけ、恐怖心を与えます。きょうだい間で比べて叱るのもNGです。

――最後に親に向けてメッセージをお願いします。

怒りの表現方法は学校でも家庭でも教わる機会がなかったので、上手に怒れなくても自分を責めないでください。毎日練習すれば上手に付き合えるようになり、許容範囲もどんどん広がっていきます。外出自粛が続く中、イライラすることもあるかもしれませんが、お父さんお母さんが笑顔でいることが子どもにとっての最高の教育です。日々の子育てにアンガーマネジメントをぜひ取り入れてみてください。

【プロフィール:小尻美奈(こじり・みな)】
1977年、福岡県生まれ。幼稚園教諭、保育士などを経て一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定のアンガーマネジメントコンサルトに。学校や企業での講演や研修、講師の育成講座など年間登壇数は約90回。中学2年生と小学6年生の母親。著書は「ママも子どももイライラしない 親子でできるアンガーマネジメント」(翔泳社)。共著に「子育てのイライラスッキリ! ママのアンガーマネジメント8つのマジック」(合同出版)。個人ブログで子育て情報などを発信中。

北川サイラ
北川サイラ

1992年生まれ、神戸出身。2016年に朝日新聞社入社。静岡、大津総局を経て、2020年10月から現職。小学生のころは器械体操に夢中でした。趣味は家庭菜園、寺社や銭湯めぐりなど。

関連記事 Related articles

新着 New!