2021.02.16
学びインタビュー 小内三奈

第4回:「なんでそう思ったの?」話せる子を育てるには、親の聞く力が大事


 マスク越しの会話が続き、仲間との関わりの場が制限される中で不安視されているのが、子どもたちのコミュニケーション能力の低下です。
「コミュニケーション力」を高めるためだけでなく、「論理的思考力」を育てるために「対話教育」を教育理念の一つに掲げる「こぐま会」室長・久野泰可先生。コロ禍の今、子どもの「対話力」をアップさせるために何をすればよいのか? 家庭ですぐに実践できる、貴重なアドバイスをいただきました。

「対話力」には、まず詩や童謡の暗唱で声を出す訓練を 

――自分の考えや感じたことを言葉でうまく表現できるようになるためには、どうしたらよいでしょうか?

ぜひおすすめしたいのが、子ども向けに書かれた詩集や童謡を暗唱することです。ご家庭で気軽に取り組むことができ、「話す力」がぐんと身についていくと思います。

はじめは、親子で一緒に暗唱します。次に、お子さん1人に読んでもらい、お父さん、お母さんが聞いてあげるのがいいと思います。もちろん、読み終わった後には大きな拍手も忘れずに。

金子みすゞさん、谷川俊太郎さんなどが書いた子ども向けの詩集や俳句集などから、気になる1冊を探してみてください。そして、親子で楽しみながら一緒に暗唱するところから始めてみてもらえたらと思います。

――恥ずかしがる子どももいますよね。

子どもには色々なタイプがいて、一対一で話をしているときはよくお話してくれるのに、いざみんなの前に立つと名前すら言えなくなってしまう子もいます。逆に、集団の中では自分の意見が言えるのに、一対一になると押し黙ってしまう子もいます。
どんなタイプのお子さんでも、とにかく「声を発する」機会を与えてあげることです。安心できるパパ、ママの前であれば「声を発する」こともそう難しいことではないはずです。

家族の前で、短い詩や俳句、童謡を暗唱してみる、という経験を積むことで、「声を発する」ことへの抵抗がなくなることが多いです。とくに人前で話すことに自信がないお子さんであれば、拍手をもらったことがきっかけで自信がついて、お友達の前でも発言できるようになることも多いです。集団の前で堂々と話せるようになるためにも、ご家庭での体験はとても有効だと思います。

幼児期の1年というものはとても大切で、やり直しのきかないかけがえのない1年です。コロナがおさまるまでは仕方がない、と考えずに、お父さん、お母さんにはぜひ子どもの「対話力」を磨くことの重要性を認識してほしいです。

「なぜ」と繰り返し聞くことで、考えが整理できてくる

――さらに一歩進んで、「考える」プロセスをうまく言葉にできるようになるためにはどうしたらよいですか? 

自分がなぜそう思ったのか? なぜそう考えたのか? という考えのプロセスを話すことは、子どもにとっては本当に難しいことです。そこは大人がうまく「キャッチ」して「つなぎ」をしてあげる必要があります。
「どうしてそう思ったの?」「そうだね。そうするとどうなるの?」「なぜ?」と繰り返し聞いて、意図的に子どもに発言させることです。

実際、教室での答え合わせの際、「どうして?」という質問に対して繰り返し答えているうちに途中で自分自身の間違いに気づく、というケースが多々あります。言葉で説明することで、自分の思考回路が整理できて考えをより深めることができます。

子ども同士、みんなの前で1人ずつ自分の考えを言い合う場で、お友達から違った考え方を聞いたり指摘を受けたりすることで、自分の考えの間違っていた点に気づくこともあります。

言葉を発する力のベースは間違いなくご家庭で養われるものです。
ぜひご家庭でお子さんと積極的に意見を交わし、「なぜそう考えたの?」「なんでそう思ったの?」と聞いてお話してもらってください。
はじめから上手に言語化できないのは当たり前。お子さんの表情、身振り手振りから言葉にならない言葉をうまくキャッチして、考えを言葉に置き換えるサポートを忘れずにやってあげてくださいね。

「対話式」の絵本の読み聞かせが、考える力につながる

――話す、聞くの「対話力」が「コミュ力」や「論理的思考力」アップにつながりますか?

私が大切にしている「対話力」とは、人の話を聞く力、自分の考えや思いを言葉できちんと伝えられる力です。この「対話力」は、本格的に学習をスタートさせる小学校入学までにしっかりと身につけておきたい能力です。

「対話力」があれば、当然コミュニケーションが上手にとれる子になります。さらに、ものごとを順序立てて論理的に考える力の土台も養うことができます。
日頃からご家庭で「なぜ?」「どうして?」という投げかけを繰り返し、意図的に子どもの言語の力を育てることが、ひいては「コミュニケーション力」や「論理的思考力」、つまり「考える力」を育てることにつながっていくのです。

――口数が少ない子にはどう促せばいいでしょうか?

毎日どんどんお子さんに質問をして、考えていることや自分の気持ちを言葉にする機会を増やしてください。そして、よく聞いてあげてください。

子どもにとってお父さん、お母さんは、言葉で伝えなくても何となく心の内を理解してもらえる相手ですよね。親も、子どもの表情を見れば言いたいことがわかるかもしれません。
でも、お子さんにとって「言葉にしないと伝わらない」という経験を積むことが大切です。
あえて「どうしたいの?」「どう思うの?」と尋ねること。言葉で確認することを意識してみるとよいと思います。

絵本を読んであげるときにも、「対話式」の絵本の読み聞かせを実践するといいですね。黙って最後まで聞くのが当たり前になっているかもしれませんが、「最初のページから思ったこと、気づいたことをどんどん言ってみてね」と伝えて、話す機会を増やす工夫をしてみてください。

人の話を聞けない子には、聞くことの楽しさと大切さを伝える

 ――逆に、人の意見を聞けない子にはどう言葉がけすればよいでしょうか?

人の話を聞けない場面はいろいろありますが、相手が大人の場合と、友達の場合とでは、対策が少し違ってきます。

相手が大人の場合は、子どもの興味のある話や絵本などを読んであげ、「聞く」楽しさを実感してもらうことです。また友達同士の関係においては、友達の話を聞かないとおしゃべりも楽しくないということを実際の場で伝えてあげることです。一つの課題をめぐって、相談し、みんなで協力して一つのものを作り上げるなどの経験を積むことで、友達の考えや意見を「聞く」ことの大切さがわかってくるはずです。

そうした経験が土台にあれば、「先生の話を最後まで聞こうね」「お友達の話も聞こうね」ということが伝わっていくはずです。「性格だから仕方がない」と諦めたり、突き放したりせず、「聞く」ことの大切さと楽しさを伝えてあげてください。

子どもの話が長くても、じっと我慢。聞いてもらった子は伸びる

 ――子どもの要領を得ない話。どこまで付き合うべきでしょうか?

私も経験があるのですが、「桃太郎ってどんなお話かな?」と尋ねると「昔々あるところに・・・・」から始まって、お話の結末まで延々とお話してくれる子どもがいます。
微笑ましい姿ですが、毎回こうだと聞いている方は少し大変ですね。

でも、そこは我慢。ぜひ聞いてあげてください。幼児期の子どもにとっては、とにかく何事も経験。言葉に出して話をする、聞かれたことに答える、という経験を重ねることで、だんだんと要点を伝えることができるようになります。

ご家庭で質問を投げかけたときに、大人が思っているような的を得た答えではなくても、「要は○○ということ?」「だから、○○なんだよね?」とは言わないことです。お子さんにとって「聞いてもらった!」という体験がとても大切です。子どもは自分の話を聞いてもらった温かい体験を積み重ねて、伸びていくものなのです。


プロフィール:久野 泰可(くの やすよし) 

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、1986年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。こぐま会HP:https://www.kogumakai.co.jp/


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小内三奈
小内三奈

ライター・インタビューアー。ビジネス・教育分野を中心に、新聞、雑誌、Webメディア等で執筆中。経営者や教育現場への取材の他、教育書・児童書の書評を執筆。その他、旅行、グルメ等幅広いジャンルに取り組む。好奇心旺盛でキラキラした子ども時代を過ごしてほしいと願い、「今、この瞬間」を大切に育児に励む2児の母。子どもの頃熱中したのはピアノ。4歳から高校1年まで続け、最後の演奏曲はショパンのノクターン。

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