2021.02.21
学びインタビュー 平岡妙子

第4回:「もっと知りたい」授業後は部活動でやる気を伸ばす「探究学舎」の子どもたち

「夢中になる力」第4回:授業後は部活動でやる気を伸ばす「探究学舎」の子どもたち

好きなものを「探究学舎」(東京都三鷹市)の学びから見つけて、好奇心に火をつけた子どもたちがいます。興味を持ったことへの炎を、燃やし続けるにはどうしたらよいのか。「好き」を見つけたあと、探究心を伸ばし続けた子どもたちを紹介します。親はどんなふうに寄り添ったのでしょうか。

手作りの望遠鏡で月のクレーター 本物の望遠鏡で土星の輪

静岡市の小4、増田結桜(ゆら)さん(10)が宇宙に興味を持つようになったのは、2020年4月に探究学舎のオンライン授業「宇宙編」を受講したことがきっかけでした。授業後に、「望遠鏡を作ってみよう」という自宅でやる課題が出ました。興味を持ったことを、さらに自分で追求するための「クエスト」と呼ばれている自由宿題の仕組みです。知識を得て、「面白い!」と心が動いたことを、さらに手を動かして物を作ることで実体験に発展させます。増田さんは、ポテトチップスの筒を2つ重ねて長くした先に、接眼対物レンズをつけて、手作り望遠鏡を完成させました。中に黒い画用紙を貼るなど、詳しい作り方は宝槻泰伸代表が動画で教えてくれました。ポテトチップス望遠鏡で、満月に焦点を合わせてみると…。月のクレーターまで、はっきり見えて、びっくりしました。

手作り望遠鏡を持つ増田結桜さん。中央は10歳の誕生日にもらった824倍の天体望遠鏡

もっと、星を見てみたい。本物の天体望遠鏡を買ってもらい、土星を見ました。増田さんは「輪っかが見えたときが、人生で一番、最高の瞬間だった。すごくうれしかった」と感動しました。図鑑で眺めていた星が、自分の目で見えた。この感激を、たくさんの人と分かち合いたくなりました。そして増田さんは、探究学舎の中での部活動、「天文部」を立ち上げました。

21の部活動で全国の仲間とイベント 「もっと面白くしたい」と新たな意欲

「探究学舎」には、好きなことについて友だち同士で語り合う「部活動」があります。現在は、歴史部、鉄道部からYouTu部、ズンバ部まで21もの分野に広がっています。「ディスコード」というコミュニティサイトを使って、自分が作った作品や写真を載せ、チャットしながら、全国にいる子ども同士で交流しています。マインクラフト部は400人を超えています。コロナ禍の中で、子どもたちが直接会う場がなくなったため、横のつながりを作ろうと生み出した仕組みです。部活動をサポートしている宮脇僚さん(27)は「好きなものを紹介し合い、クイズやイベントなど次々と新しいチャレンジをして、喜び合っています。活動をもっと面白くしたい意欲が出てきて、子どもたちの成長が感じられます」と話しました。

オンライン観測会を開催 デジタル技術や積極性も身についた

増田さんは同年5月24日の夜、オンライン観測会を開きました。「おとめ座のスピカ、見えたね」などと全国の仲間と感想を語り合い、まったりとした雰囲気ながらも刺激的な夜でした。「ゆらちゃんの天体観測会」と名付けられ、その後も5回以上実施。デジタルの技術もどんどん覚え、他の県の人の星空を「スポットライト」という機能で大きく映し出したり、曇り空の地域の人のためにクイズを作ったり、参加したみんなが楽しめる工夫を重ねています。

おとなしかった増田さんですが、積極性が身につきました。いまでは学校でも学級委員長に立候補して、みんなの前で演説をして見事に選ばれました。

増田さんの父親はフレンチレストランを経営しています。そのことも影響しているのか、増田さんは「将来は宇宙食を作る人になりたい。宇宙で日本食とかも開発してみたい」と夢を広げています。

増田さんが読んだ宇宙に関する本 

完成の楽しさは子どもが体験 「出来た」という気持ちに

母親の郁理(かおり)さんの話 学校以外にも自分の居場所を見つけて、視野が広がった感じがします。学校でつらいことがあったとしても、気にならなくなったようです。パソコンの使い方など最初は助けてあげますが、完成する最後の良い部分は子どもに譲って、「出来た」という気持ちを持たせました。子どもはすぐに覚えて、宇宙について語り合っています。星を見ていると、自分の悩みもちっぽけなことに思えますね。


元素のビスマスで指輪作り 水晶を探しに長野県の山に通う

手作りのビスマスの結晶を持つ萩原一颯(いぶき)君(右)と、ビスマス指輪をする竜誠(りゅうせい)君

結晶づくりは50回以上挑戦 テーブルを焦がしたことも

「ビスマス、すごくきれい!幾何学模様が美しい」と、元素のビスマスの美しさに魅せられたのは、群馬県前橋市の小6萩原一颯(いぶき)君(12)と、小4竜誠(りゅうせい)君(10)の兄弟。「元素編」の授業を受けた時に、宝槻さんが手に入れた大きなビスマスを見せてもらいました。色合いに感激。家でもビスマスの結晶を作れると聞いて、2人は挑戦をしました。ビスマスチップスを買って熱で溶かして、どうしたら大きな結晶を作れるか。表面温度のあげ方を変えるなど探究を続けました。ビスマスを卵形にしたり、フォークを曲げて「ビスマス指輪」を作ったりなど、遊び心もたっぷり。結晶を作る実験は50回以上続けています。


実験を繰り返すうちに、ダイニングテーブルを焦がしてしまったことも。りゅうせいくんは「やりたいって言うと、うちは何でもやらせてくれる。お母さんの方が熱中しているぐらい。不思議に思ったら、とことん調べることが好き。もっと知りたい」と話す。元素で調べたことを巻物にまとめた模造紙は、10メートルを超えました。

集めた石で「リアル元素周期表」を手作り

きれいな石を集めることにも夢中になりました。ヒスイが見つかるという新潟県糸魚川市などの海岸や水晶を探しに長野県まで、家族であちこちに何度も出かけました。一颯くんは「見つけたときの達成感がある。根気強く探せるようになりました」と言います。様々な石がどんな元素から成り立っているのかを調べて、「リアル元素周期表」を作りました。大きな元素表を作り、集めた石を貼り付けています。118の元素のうち、すでに約50個集まりました。「どんどん集めたい」と2人は声をそろえています。

 長野県で探し出した水晶を持つ萩原兄弟

子どもの興味に親も夢中 一緒に楽しむ姿勢で

母親の優子さんの話 やってみたいという興味の火がついたら、消えないうちにやらせてあげたいです。2人が喜んでキラキラと目を輝かせている姿を見ているうちに、私も夢中になって、親子で一緒に楽しんでいます。2人はおとなしかったのに、いまでは科学館や石拾いに出かけた場所で、詳しい大人にどんどん質問できるようになりました。知識だけでなく、粘り強さと積極性が身についたと思います。

「夢中になる力 探究学舎」の記事一覧

平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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