2021.03.23
習い事最前線 小川真吾

平面と立体を交互に学び、手で考える総合造形教室「図工ランド」

粘土や毛糸、紙のクッション材で、ハンバーグプレートを作る女の子。

東京都内で、目黒本校を中心に5カ所の教室で工作や絵画などの総合造形を教える「図工ランド」を取材しました。アート、デザイン、建築など、平面と立体の表現をまんべんなく楽しめるカリキュラムが子どもたちに人気です。

「手で考える」が創造力を育む

建物をつくる途中にアドバイスをする先生。

取材に訪れたこの日は、平面と立体を学ぶ子どもたちがその力を思い切り発揮する「自由工作」の様子を取材しました。カリキュラムの中でも子どもたちに一番人気がある課題です。

制限時間は90分。テーブルに用意された30種類ほどの材料から好きなものを選び、食べ物や道具、建物などを自由に作ります。気に入った材料をすぐに選ぶ子もいれば、じっくりと考えてイメージを膨らませている子もいます。

時間内に、何をどんな材料でどう作るのかを考えて試行錯誤するため、目的のために必要なことを見立てる力や創造力を発揮できます。

粘土で木を作ったあと、さらにイメージを膨らませて地面に毛糸で模様を描いた女の子。

図工ランドでは「手で考える」ことを大事にしています。頭の中で考えているイメージを、実際に手を動かして外に出すことで、初めて創造する力に変わります。手を動かすことで、次にどうすれば良いのかが見えやすくなります。

子どもたちが作品を作るスピード感はとても速く、終了時には3つ以上の作品を完成させた子もいたことに驚きました。

平面と立体を交互に学ぶ


図工ランド本科のカリキュラム。(提供:図工ランド)

図工ランドでは、本科でお絵描きと工作を総合的に学びます。本科のカリキュラムは、年長から小学5年生までを対象とした幅広い内容です。小学4年生以上を対象とした専科の絵画コースでは、デッサンや油絵など、より高度なことを学ぶこともできます。小学5年生からは建築やグラフィックデザインのコースにも参加できます。

本科で取り組むのは、平面と立体を交互に学ぶ14種類の課題です。どの課題も一度の授業で必ず作品を完成させる完結型で、いつどの課題からでも始められる仕組みです。お絵描きや工作を通じて、アートやデザイン、建築などの本格的な理論を楽しく学べます。平面と立体の両方を体験し、経験を積み重ねることで、絵を描くテクニックだけでなく、自ら発想する力と、発想を形にまとめ上げる力が身につきます。

カリキュラムには、代表の木村夫妻が一級建築士として活躍してきた経験が反映されているため、大学で学ぶような深い内容に触れることもできます。工作課題の基礎造形では、ユニットという多面体の折紙を使って、力学や慣性、幾何学、色の組み合わせなど、STEAM教育に近い内容も学びます。

教室に吊り下げられている「ユニット」。基礎造形を学ぶために使われる多面体の折紙。

言葉で聞くと高度で複雑な印象がありますが、同じ規則で積みあげていくような作業は小さな子どものほうが得意な場合もあります。小学校高学年の子どもより、年長の子どものほうがうまくできることも珍しくありません。

こうした図工ランドのカリキュラムは、美術と建築を総合的に学ぶ歴史あるドイツの美術学校「バウハウス」がお手本となっています。世界的な建築家やデザイナーを数多く輩出した有名な学校です。

下手でもいいから自分で作る教室を作りたい

図工ランドの代表夫妻・木村明彦ランド長(63)と木村美幸副ランド長(62)。

図工ランドは、代表の木村夫妻が自分の娘たちや、その友だちにお絵描きや工作を教えることを目的に2005年にスタートしました。

木村さんは、娘たちが小さな頃に、高名な画家が教える評判の良い教室や、長年運営している教室などに通わせたことがありました。ある時、子どもが信じられないほど上手な絵を持って帰ってきました。「自分で描いたの?」と聞くと、その大部分を先生が手直ししていました。

木村明彦ランド長(以下、明彦さん)は、「もっと下手でもいいから自分でやったほうが良いと思ったんですね」と話します。

明彦さんや美幸さんを含め、図工ランドは小さい頃にお絵描き教室へ通っていた経験のある講師が多く、その楽しさを今でも覚えています。

明彦さん「私自身、誰かに言われて何かをすることが昔から苦手でした。絵や工作は自分の考えだけでもできるのがいいところです。私が通っていた教室は自由に描かせてくれたし、部屋に抽象画が置いてあったり油絵の具の匂いがしたり素敵な感じがしました。そういう場所があったら良いなと思ったんです」

木村さんの娘たちがまだ小さかった頃の習い事教室には、中の様子が見学できないところも多く、指導が厳しくて子どもが怖がっているところもありました。当時は、先生がお手本を示したり、上手に直してあげるような教え方も一般的でした。そこで、「だったら、自分たちでやってみよう」と、夫妻で図工ランドを立ち上げることを決意しました。

パッと見て実際に作れる力が身につく

空中ブランコを作った作品。

ふたりに、創造力の成長はどんなところに現れるのかを聞きました。明彦さんは「絵や工作は学習のように点数だけで測れませんが、できるようになったことは、作品を見れば明らかにわかります」と話します。

例えば、木を作ろうと思ったときに、ストローへ縦方向にハサミを入れて、切リ込みを入れた部分を広げて足をつくり、セロハンテープで地面に接着すれば木が立つ、というような複雑なことが、一度作った経験があれば、瞬時にわかるようになります。道具の使い方が手足を使うように自然とわかるようになり、その引き出しが増えて、黙っていても色々なことができるようになります。

建物を作ったあとに人形を動かす仕掛けをつくる男の子。

家にあるダンボールを見たときに、このくらいの時間で、この材料で、こうすれば木になる、建物になる、と判断して実際に作れる能力は、とても高度な力です。こうした力は体感すると理解しやすいもの。

明彦さん「材料が重ければ落ちますので、どうすればくっつくのか、テープを重ねて貼れば強くなるのか、ということを工作しながら考えます。建築の設計も、難しい計算をする前に、つっかえ棒をこう斜めに入れれば強くなるということを体感できれば良いわけなんです」

木村美幸副ランド長(以下、美幸さん)も、大学で建築を学んでいたときに「模型で作れるものは実際に作れる」と教わったと言います。

美幸さん「建築と聞くと、どうしても構造とか法規とか、難しいことを考えてしまうけれど、まずは模型を作ることが大事なんです」

例えば、観覧車を作りたくても、想像より複雑にできていて実際に作るのが難しい場合はあります。そういったものを、どこまで簡単な作りにして納得できるかを考えることが重要です。お皿が回れば良い、というのもひとつの答えです。どこまで追求すれば自分が納得して作れるのかを考えて試行錯誤することに意味があります。こうした力は、複雑なことを簡単にして表現する力にもつながるでしょう。

手を動かしてものを作り続けると、どう作れば完成できるのかを見極める感性が身につき、パッと見て実際に作れるようになる目も養われていきます。

心の奥まで見てほめる

けん玉を見ながら持ち手の部分をほめる先生。少し前に、ほかの先生が作りたいものを聞き、持ち手を強くしっかりと作ってみたらどう?と提案していました。

この日は4人の講師が子どもたちをサポートしていました。子どもたちが何をつくろうとしているのかや、ほかの講師が何をアドバイスしたのかを把握して、子どもが挑戦した部分に共感し、ほめ言葉をかけます。答えや間違いを教えるのではなく「こうしたらどう?」と提案することで、子どもが自分で考えて実行する力を育みます。

一番大事なのは子どもをほめることであり、保護者がほめている子どもはのびのびと絵が描けると美幸さんは話します。絵や工作はスポーツと一緒でやればやるほど上手くなるものですが、子どもは心がやわらかいため、なにそれ?と言われたり、ほかの子どもと比べられたりすることで簡単に傷ついてしまいます。ほめると子どもはもっとやりたくなります。

絵を描くことは、手でものを汚すところから始まるとよく言われ、赤ちゃんのときに曇ったガラスに触ってついた手の跡が形になり、それがお絵描きになっていきます。最初は、りんごも太陽もお母さんの顔も、全部丸ですが、手や目を描くと段々お母さんの顔になっていきます。そのときに、これはりんごだね、これはお母さんだね、と声をかけていると、それが描きたい絵になっていきます。

美幸さん「どう描けばいいのかわからないようなモヤモヤしたイメージを、外に出して客体化することが創造力なんです。工作も、作ったものが客観的に見えます。中でモヤモヤしているだけでは創造ではないので、外に出して色をつけてみる。すると、そういうことをしていいんだと自分で思えるようになる。その積み重ねです。変な形のなんとも言えないものが作ってみたらできてしまったとして、それは何を作ったとは説明できないかもしれませんが、イメージが外に出た形なんです」

明彦さんは、ほめるときは出来・不出来ではなく、何をやりたかったのかや、その個性など、心の奥まで見て共感してあげることが大事だと、子どもの心に寄り添う大切さについて語ります。

明彦さん「子どもなので、できないことは実際多いんです。だけど、本当はこうやりたかったんだよね、とよく見てあげることが大切だと思っています」

教室情報

図工ランドは、お絵描きや工作を総合的に楽しむ本科クラスのほか、本格的に力を育てる専科の絵画クラス、グラフィックデザインクラス、建築クラスから成る工作造形、絵画教室。2005年に自身の子どものために設立。現在は東京都内で、目黒本校を拠点に5カ所の教室を運営。会員数は600人を超え、目黒本校には200人以上の生徒が通います。建築家やデザイナー、美大卒のスタッフが指導を行い、正解のない未来に対応していく自律型人材を育成中。子どもの「創造性」や「デザイン力」を育む、楽しくてためになるカリキュラムを提供しています。

撮影:篠田英美

関連記事j:子ども向け絵画教室ではどんなことを学べるの?メリットや授業内容を解説

小川真吾
小川真吾

1985年生まれ。千葉県出身。ウェブメディア運営企業で、編集ディレクターやクリエイティブディレクターを経験した後、2019年に朝日新聞社へ入社。小学生のころは山遊びやサッカーに夢中でした。趣味は、音楽、映画、写真、料理などです。

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