2021.03.01
学びインタビュー ゆきどっぐ

「岩田かおりのここだけの教育話」 森本佑紀氏と語る 「勉強が冒険に変わる魔法」

ガミガミ言わなくても勉強する子に育てる「戦略的ほったらかし教育」を発信する家庭教育専門家の岩田かおりさん。招待制の音声配信SNS「Clubhouse(クラブハウス)」で、公教育や民間教育に携わるゲストを招いた対談連続企画「岩田かおりのここだけの教育話」を、ファシリテーターの教育系ライター洪愛舜(ほん・すえん)さんとともに開催しています。2月16日は、ゲームで学ぶ探究・知育型通信教育"tanQuest(タンキュークエスト)"を創業した森本佑紀さんを招き、「勉強が冒険に変わる魔法」をテーマに話しました。Clubhouseで事前に参加者に許可を得たうえで、対談内容を記事化しました。

面白さが原動力の「遊び的学び」

岩田かおりさん(以下敬称略):今回のゲストである森本さんは、子どもをあおらず、学びを楽しむ魔法をかけてくださる方です。「あおらない」は母親にとっても大事なポイントで、教育観に共感します。

森本佑紀さん:何かにハマるためには、退屈な時間も重要です。だから、僕は子どもをあおらないようにしているんです。子どもにはあおられますけど(笑)。

僕はもともと勉強嫌いな子どもで、大学で学びが好きになりました。教授が化学式から経営戦略をひも解いてくれて、界面活性剤をテーマに「和歌山県に工場があるのはなぜか」「ヤシの実を使うのはなぜか」とまるで落語のように話してくれたんです。その教授に学びの魔法をかけられて、活字にもハマりましたね。それも退屈な時間があったからこそです。

探究・知育型通信教育「tanQuest」では、面白さを原動力にする子どもに向けて、「当たり前が覆される面白い学び」を伝えたくて、ゲームや動画を制作しています。化学を学べるバトルカードゲーム「アトモン」で遊ぶtanQuestの子どもたち。 

岩田:偏差値で考える前に、遊び的な学びが必要ですよね。あるイベントで、tanQuestで発売しているカードゲーム「免疫レンジャー」を使ったんです。免疫の仕組みを学べるゲームで、細胞について興味を持った子がすごく増えました。今では、体内の細胞を擬人化した作品「はたらく細胞」のイベントに参加するなど、遊び感覚で学習を続けています。楽しかったから調べるという流れができていて、ゲームが学びの入り口になっていると感じますね。

森本:小学1年生以上になると、風邪などなにがしかの病気にかかった経験がありますから、身近に感じられますよね。新型コロナウイルスという言葉が世に放たれたことで、「どうして発病するか」などの問いが生まれてきていると思います。それをきっかけに、興味を持ったら細胞図鑑などで調べられるようなゲームにしたんです。

洪愛舜さん:ゲームはどんな風に作るんですか?

森本:まず僕たちが勉強し、自身に浮かんだ問いを見つめながら、調べています。

岩田:わかります。これは「講師あるある」ですけど、テーマをもとに自分が話そうと思ったら、深く理解していないと難しいですよね。

森本:逆に言うと、学ばせてもらっているとも思います。

洪:楽しく、面白く伝えるためには本質がわかってないといけないですもんね。

森本:そうなんです。学説って、従来の枠の外の出来事が起こった時に、新しく定義し直してできるんです。今回であれば新型コロナウイルスが見つかった時に、「ウイルスの大きさ」「変な形」という問いがどんどん生まれたはずで、その繰り返しから学説や学問ができていくんですよね。この追体験が面白いです。

自分のやりたいことを知る「欲望形成支援」

洪:森本さんの「学びは面白さから始める」には、岩田さんの「戦略的ほったらかし教育」とも親和性がありますね。

岩田:そうですね。家庭教育で勉強をガンガンにやらせる必要はなくて、楽しい体験を与えて、きっかけづくりができればいいと考えています。楽しい体験さえ持っていれば、その後の公教育や民間教育でさらに深められます。これが「戦略的ほったらかし教育」なんです。

「戦略」というと難しく感じますが、「これに興味を持ってくれたらうれしい」と布石を置くこと。その時には興味を持っていなくても、「うちの子には合わなかった」くらいで気にしなくていい。中学、高校、大学と進学するうちに興味を持つかもしれないから。それが才能の芽をぐんぐん伸ばす秘訣です。

森本:僕もそれ、思います。いまでこそ僕は自由な雰囲気を身にまとっていますけど、父親が傍若無人なタイプで、幼い頃はやりたいことを言えなかったんです。「良いことを言わなきゃ」「いい子でいなきゃ」って焦っていて、誰かから「何をやりたいの?」と聞かれたら、保護者が望む返事をしていました。いま、「欲望形成支援」という言葉があるくらい、自分のやりたいことがわからなくなる“いい子”が増えています。

岩田:そう。子どもって、保護者の反応を読む傾向があるんですよね。

森本:正直、「何がしたいか」が自分でもわからなくなった時期もありました。だけど、「何がやりたいか知る」ことは、同時に「やりたくないことがわかる」ことにもつながります。

「勉強が冒険に変わる」というテーマで仕事をしていますけど、時間には限りがあるから、すべての洞窟を探検することはできません。「好きじゃない」ことを知るのも大事。だから、「興味を示さなかった」「ハマらなかった」ことも重要なんです。

かおりメソッドのイベントに森本さん登場!カードゲーム「免疫レンジャー」で遊び倒しました。

情報はすべて飲み込まずに「よくかんで食べる」

岩田:今の子育てや教育って、情報がたくさんあって混乱しますよね。例えば「字の習得」では、「早く読み書きできたほうがいい」説と、「イマジネーションを働かせるために遅いほうがいい」説と、両極端の答えが出てきます。この状態って、子どもが毎日、学校からプリントを100枚持って帰ってくるのと同じ。情報があり過ぎると、どれが大切なのかわからなくなります。

「教育情報を取らなきゃ」と焦るのはわかるけど、むやみやたらに摂取すると何が重要かわからなくなりやすい。

森本:そもそも、誰にとっても正解になる答えって教育に存在するのでしょうか。正しい・正しくないっていう正解探しは文脈依存している場面も多いです。だから、子どもの一番の観察者である保護者が判断して、間違ったなと思ったり、悩んだりする。その過程こそが正しいんだと思います。

岩田:情報が多いからこそ、我が家流にどう変化させるかが大切。そのためには実践に移していくことです。

森本:「よくかんで食べる」みたいな話ですよね。ファストフードをたくさん食べるより、産直の食材で作られたスローフードを、しっかりと噛んで味わいながら食べる。自分流って、自分がどこからきて、どこへ行くのかを理解できて、初めて会得できるものです。

岩田:本当ですね。私がゆくゆく実現したいと思っているのが、公教育と民間教育、家庭教育がタッグを組むことです。これまでは、家庭教育が公教育の文句を言ったり民間教育が公教育を批判するなど、対立することが多かった。でも、民間教育が公教育に入っていくことも増えたし、融合できる教育になるといいなと思います。

それこそ、学校の中で「tanQuest」の授業をするような未来が到来すると、保護者も教員も生徒もメリットですよね。

森本:僕が登壇するときは顔を白塗りにした「モッパーくん」というキャラクターで登場するので、小学1年生は泣いちゃうんじゃないでしょうか(笑)。

でも、融合した教育になっていくといいですね。僕が中高で通った学校は進学校で、「できる」「できない」の2つしかなかったからつまらなかった。でも、探求的学びをしていれば面白く感じられたと思う。

とはいえ、中高生の頃の体験があったからこそ今の僕があります。現在を肯定すると、過去の体験も肯定せざるを得なくなる。

子どもが学校でつまらなさそうにしていたから、将来勉強嫌いに育つかというとそうではない。人間って波があるから。大人になってポジティブに受け止められるようになるために、すべてが必要な経験になっていくと思います。

岩田:恋愛と同じですよね。過去の恋愛も、今に生きるっていう。

森本:恋愛に関しては克服できていない部分があるので、大きくはうなずけないですけど(笑)。でも経験は大切です。


プロフィール:森本佑紀(もりもとゆうき)

神戸大学経営学部卒。広告会社勤務の後、2014年「tanQ」株式会社を創業。子どものおもちゃになるのが得意。全国を回り、毎年1,000人以上のこどもたちに、伝道師”森本”として、遊びを学びに変える”tanQ”を届けている。

岩田かおり(いわたかおり)

株式会社「ママプロジェクトJapan」代表。ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる親子講座「かおりメソッド」「天才ノート」主宰。家庭教育専門家。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の想いから、独自の教育法を開発。3人(1男2女)の母。

洪愛舜(ほんえすん)

子育て・教育系ライター。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。編集プロダクションecon主宰。目黒駅前新聞編集長。著書に「もやもやガール卒業白書」(MMR)、絵本『すき!I like it!』(教育画劇)がある。立命館大学理工学部卒。1女1男2児の母。


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ゆきどっぐ
ゆきどっぐ

1986年生まれ。フリーランスの編集者・ライター。「文春オンライン」「品川経済新聞」などで執筆中。テーマは主に中学受験や子育て、地域情報、犬、漫画など。幼い頃に始めたピアノレッスンでは曲が弾けるまで毎日練習。そのおかげで、一つのことに向き合う大切さを学びました。

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