2021.03.23
習い事Q&A 小川真吾

子ども向け絵画教室ではどんなことを学べるの? 授業内容や身につくスキルを解説

子ども向けの絵画教室はどんなことをするの?特別な感性は必要なの?東京都内に5カ所の教室を展開する子ども向け総合造形教室「図工ランド」代表の木村明彦さん(63)と美幸さん(62)のご夫妻にお話を聞きました。絵画や工作を学ぶことによって、どんな力が身につくのかについて教えてもらいました。

今日のポイント

  1. アート・デザイン・平面・立体でカリキュラムが違う
  2. 創作の習い事は小学生になってからがおすすめ
  3. 絵や工作で、創造力、課題解決力、ものづくりの基礎体力が身につく
  4. 教室は、思い切り表現でき、先生や友だちから刺激を受けられる場所
  5. 保護者の準備は汚れてもいい服程度
  6. 教室選びのポイントは教育方針と子どもが楽しめるかどうか
  7. 保護者にできるサポートはとにかく共感してほめること

アート・デザイン・平面・立体でカリキュラムが違う

絵画教室のカリキュラムには、イメージを表現するか、目的に合わせて作るデザインなのか、総合的に学ぶのかによって選択肢が異なります。

どんなカリキュラムがあるの?

A.アートはイメージの世界、デザインは目的や用途を意識します。

木村明彦ランド長(以下、明彦さん):絵画教室で教えている内容は、アートとデザインのどちらに寄っているかで違いがあります。アートならイメージの世界、デザインなら目的や用途を意識しているといった違いがあります。

A.平面と立体の違いもあります。

明彦さん:図工ランドを例にすると、平面なら、自由なお絵描き、写生からグラフィックデザインまでの授業があります。平面で絵を描くことは、色や形を構成する力や感じたことを表現する力が身につきます。立体なら、粘土やしかけづくりのほか、建物などの空間デザインや、木工・彫金などを作ります。立体でものを作ると、創意工夫や空間構築の能力を高める力が身につきます。

A.年齢や経験値が高くなると、専門的で高度な技法を学ぶカリキュラムの教室もあります。

明彦さん:図工ランドでは、小学4年生以上を対象にした絵画クラスで、デッサンや色彩、構成から技法までを学び、すべての造形の基礎となる観察力、描画力を身につけます。鉛筆や木炭、透明水彩絵の具などの画材を用いて、石膏像や静物のデッサンをします。小学5年生以上になると、グラフィックデザインのクラスで本やパッケージ作りを通じて視覚伝達表現を学んだり、建築クラスでは立体の造形や構造をより深く学ぶことができます。

教室に通うのは小学生になってからがおすすめ

赤ちゃんのうちから自由に絵を描く教室もありますが、決められた課題で絵や工作をする教室は幼児では早すぎる場合もあります。

いつから始めるのがいいの?

A.課題に取り組む習い事は小学生からがおすすめです。

明彦さん:図工ランドでは年長から教えていますが、本当は小学生からでも良いくらいだと思っています。「お題」があるところでは、子どもが説明を理解する必要があるため早すぎる場合があります。

A.創造力を養うなら赤ちゃんからはじめてもいいでしょう。

明彦さん:創造力を養いたいということであれば、家で何かを触ったり、落書きをしたりするだけでも良いでしょう。幼稚園受験を意識する場合は例外になるかもしれません。

木村美幸副ランド長(以下、美幸さん):教室によっては、赤ちゃんのうちから自由に絵の具で遊ばせるところもあり、その年齢に特化した体験ができます。決められた課題に取り組むのなら小学生からでも良いと思います。

芸術的感性や絵のスキルがなくても大丈夫?

A.特別な感性やスキルは不要です。

明彦さん:創造性や感性はもともと持っているものではなく、作りながらできていくものだと思っています。線を描いたり、ものを組み立てたりすると、次はこうだということがわかってきます。

A.創造力は作りながら徐々にできていきます。

美幸さん:絵を描くことは、手でものを汚すところから始まるとよく言われます。赤ちゃんのときに、曇ったガラスに触ってついた手の跡が形になって、それがお絵描きになります。最初は、りんごも、太陽も、お母さんの顔も、全部描いたものは丸になりますが、手や目を描き段々と顔になります。そのときに、これはりんごだね、これはお母さんだね、と声をかけていると、それが描きたい絵になっていきます。

お絵描きや工作を習う魅力は?創造力、課題解決力、ものづくりの基礎体力が身につく

絵画や造形の習い事を通じで身につく力には、創造力、判断力や、実際に手を動かしながら課題を解決する力など様々な要素があります。ものがどんな素材で出来ているかを理解し、ものへの愛情まで育まれます。5つ紹介します。

①創造力や課題解決力が身につきます。

明彦さん:「創造」は考えているだけでは始まらないものです。慣れないと最初は固まってしまいますが、ほかの子の様子を見たり繰り返し描いたりしていくうちに、どんどん自由に絵が描けるようになります。お題があり、どうすればいいのかを考えて、制限時間内に作品を完成させますので、課題解決力も身につきます。学習のように点数だけで測れませんが、できるようになったことは形になって成果もわかりやすいため見れば明らかにわかります。

②ものを客観的に捉えられるようになります。

美幸さん:どう描けばいいのかわからないようなモヤモヤしたイメージを外に出して客体化することが創造力です。お絵描きや工作は作ったものが客観的に見えます。外に出してみると、そういうことをしていいんだと自分で思えるようになります。創造はその積み重ねだと思います。

③素材の特性を理解して必要なものを見立てる力が身につきます。

明彦さん:材料を組み合わせて試行錯誤していくと、この材料はこっちに曲がる、壁面にはこの材料が合う、などの素材の特性を理解できるようになり、目的のためにどんな材料をどう使えば良いのかを見立てる力がつきます。木を作ろうと思ったときに「ストローへ縦方向にハサミを入れて、切リ込みを入れた部分を広げて足をつくり、セロハンテープで地面に接着すれば木が立つ」というような複雑なことが瞬時にわかるようになります。家にあるダンボールを見たときに、こうすれば木になる、建物になる、と判断して実際に作れる能力は、とても高度な力です。

④ものづくりの基礎体力やものへの愛情が育まれます。

明彦さん:道具の使い方が手足を使うように自然とわかるようになり、その引き出しが増えて、黙っていても色々なことができるようになります。慣れないと手も止まりやすく行ったり来たりしますが、だんだん頭の中にある壮大なイメージを、材料を適材適所で使い、形にして結果へと落とし込めるようになるでしょう。

美幸さん:例えばみんなが作りたがる観覧車のように、作りたいけれど複雑で作るのが難しいものもあります。どこまで簡単な作りにして納得できるかということも考えます。お皿が回れば良い、というのもひとつの答えです。どこまで追求すれば自分が納得して作れるのかを考え、色々なことを試して身につけます。そうして、ものへの愛情も育まれていきます。

⑤創造は自分の考えだけでもできるのがいいところです。

明彦さん:絵や工作のいいところは、自分で考える余地が大きいところです。私自身、誰かに言われて何かをすることが昔から苦手でした。習った内容を問われることが多いなかで、何をどう描くか自分で全部自分で考えてやれるというのは面白いところだと思います。

お絵描きと基礎学力の関係はあるの?

A.創造は論理的思考を育みます。

明彦さん:絵が描ければ計算ができるようになるのかどうかはわかりませんが、とにかく手を動かし、描いたり組み立てたりすると次にどうするべきかが見えてくるのは論理的思考と言える部分だと思います。

A.基礎造形ではSTEAM教育に近い内容を学びます。

明彦さん:工作では基礎造形でSTEAM教育に近い内容を学びます。力学、慣性、幾何学、色の組み合わせを学びます。言葉だけ聞くと数学的なお勉強という印象もあり難しそうに感じますが、子どもはこういった作業に夢中になることがよくあります。

1年通うとどれくらい上達するの?

A.絵に自信を持つようになります。

美幸さん:上達の度合いは、始めた年齢や関心の度合いなど、個人差があるため人それぞれ違いますが、学校で絵を描くときに積極的に手を上げるようになったり、学校のポスターコンクールなどに自分から手をあげて作品が張り出されたりしたという話はよく聞きます。「絵のことなら私が!」と思うようになるのだと思います。

教室に行って習う魅力は?思い切り表現して、先生や友だちから刺激を受けられること

絵画教室では、自宅ではできないような思い切った表現ができるほか、先生からのアドバイスや他の子の作った作品から刺激が受けられるため、どんどん創造する引き出しが増えていきます。教室に通う4つの魅力を紹介します。

①教室なら思いっきり表現できます。

明彦さん:絵の具を思いきり使って遊んだり、大きなモノを作ったり、広げて置いておくことができるのは教室のいいところだと思います。自宅では難しい場合がありますよね。

②ものを見ながら身体的なアドバイスが受けられます。

明彦さん:実際にものを見ながら先生が直接アドバイスできることも大きなポイントです。体をどう使うかという身体的な要素や、素材の特性を生かす必要がありますので、体感しながら覚えたほうが簡単なことは多いです。 

③ほかの子どもから刺激を受けられます。

美幸さん:教室では、年上や同学年のほかの子の作品から刺激を受けることで、引き出しが増えていくと思います。

④大学で教えている内容に近いことも学べます。

明彦さん:子どもの習い事教室とはいえ大学で教えている内容に近いこともやりますから、大人がやっても面白い、深みのあることが楽しめます。大人が見てもすごいと思える作品が生まれてきますよ。

オンラインや自宅学習でも習える?

A.工作は教室で習うのがおすすです。

明彦さん:工作は立体なので、より身体的な要素が重要だと思います。材料が重ければ落ちますので、そこでどうすればくっつくのか、テープで重ねて貼るのか、ということを考えていきます。建築は、つっかえ棒をこう斜めに入れれば強くなるといった、構造や重さを体感するほうが理解が早いため、教室で習うことの利点はあると思います。

A.絵の場合は、デジタルでも描きやすいでしょう。

明彦さん:お絵描きはデジタルで描くこともできますから、オンラインでの指導も馴染むかもしれません。

A.オンラインや自宅学習でのアドバイスはまだ研究中です。

明彦さん:私たちはまだ研究中ですが、どんなふうに手を動かしているのかが見えにくかったり、言葉で説明しにくいことがあるという難しさは感じます。

(編集メモ)オンラインでの絵画教室はありますが、まだ数は少なく、実際に先生が寄り添って指導する形が、絵を描いたりものを作るには大事な要素です。

保護者の準備は汚れてもいい服装程度

絵画や工作などの習い事をするときに必要なのは、汚れてもいいような服装程度。月謝に道具や材料費が含まれている教室なら、手ぶらで大丈夫です。

保護者は何を準備すればいいの?

A.料金に道具や材料費が含まれていれば準備は不要です。

明彦さん:料金に道具や材料費などがすべて含まれている場合は、何も用意せず教室に行けば始められます。みんな汚れてもいい服装でふらっと来ています。その点は各ご家庭におまかせしています。教室によっては、つなぎを用意するところもありますよね。

教室選びのポイントは教育方針と子どもが楽しめるかどうか

とにかく大事なのは、子どもが楽しめるかどうかです。教育方針や教え方、通いやすさ、費用などで選んだあとに、体験に行くのがおすすめ。

教室を選ぶときは何を確認すればいいの?

1.まずはホームページで教育方針をチェック
2.どんな教え方をしているのかをチェック
3.手ぶらで通えるかどうかをチェック
4.月謝や通う距離など細かな点をチェック
5.実際に体験して子どもが楽しめるかどうかをチェック

明彦さん:教室の方針をホームページなどで確認したあとに、教える方法、基本的な情報を確認して、実際に体験することをおすすめします。作ったものを自宅で管理したり、道具を持たせて通わせるのは大変です。教室で保管できるかや、手ぶらで通えるかどうかも確認しておいたほうがいいでしょう。

私自身、子どもを教室に通わせる際に、高名なかたが教えているとか、評判が良いとか、長年やっている、という理由で子どもを絵画教室に通わせたことが何度かありましたが、子どもがお絵描きするよりも先生の手直しのほうが多かったり、先生が厳しくて子どもが怖がったりして、継続が難しかったことを覚えています。私たちは結果的に自分たちで教えることになりました。

A.子どもが楽しめるかが一番大切です。

美幸さん:とにかく大事なのは子どもが楽しめるかどうかだと思います。図工ランドは絵と工作がほぼ半々で工作が少し多めですが、総合的に教えてもらえるところに行く場合もあると思いますし、とくに絵が好きなようであればお絵描き中心のところを選んだほうがいいかもしれません。

費用はどれくらいかかるの?

A.東京都内でお絵描き全般を月4回学ぶ場合の月謝は1万円~1万5000円ほどです。

明彦さん:教室によって様々ですが、図工ランドの例を紹介すると、入会金と月謝がそれぞれ1万2100円で道具代や材料費がすべて含まれています。お絵描きだけならもっと手頃な月謝のところもあると思います。確認して欲しいのは、道具代や材料費が含まれているのか、別途必要なのかなど、そういった細かな条件のところです。

(編集メモ)お絵描き教室で検索すると、月4回6000円の教室もあれば、同じ回数で料金が2万円代後半に設定されているところも。水彩画のみのコースや、回数が月2回のコースなど、条件を絞ると低価格な選択肢もある一方、都心部で美大卒の現役画家が本格的な絵画を教える教室は高額な場合もありました。東京都内でお絵描き全般を学ぶ月4回の授業コースで探すと、1万〜1万5000円ほどのコースが多い印象ですが、立地や講師、対象年齢、授業内容によって様々です。

送迎は必要?

A.学校や自宅に近い教室を選べば保護者の送迎は不要です。

明彦さん:図工ランドは5カ所の教室がありますが、みなさん学校やご自宅から近い場所で選ぶことがほとんどです。保護者が車で送り迎えをする場合はあります。送迎は行っていません。教室によっては送迎があるところもあると思います。

(編集メモ)送迎付きを探す場合、アフタースクールや学童保育でお絵描きの授業が含まれているところを選ぶ選択肢もありました。

保護者ができるサポートは共感してほめること

大事なのは、とにかくほめることです。ただし、形だけほめるのではなく、子どもの気持ちを深く理解して言葉をかけることが大切です。

親が自宅でできるサポートは?

A.とにかくほめて気持ちに寄り添うことが大事です。

美幸さん:保護者がほめているお子さんはのびのび描けます。一緒に楽しんで、共感して、ほめて、子どもの気持ちに寄り添うことだと思います。子どもは、心がやわらかくて傷つきやすいので、「なにそれ?」と言われて傷ついたり、ほかの子どもと比べられて傷つくことがあります。

A.ほめると、たくさん描くようになり、上手になります。

美幸さん:絵はスポーツと一緒で、たくさん描けば上手くなるものです。ほめるともっとたくさん描きたくなっていきます。

A.ほめるときは出来・不出来ではなく心の奥まで見てあげることが大切です。

明彦さん:ほめるときに大事なのは、何をやりたかったのかや、個性など、心の奥まで見て共感してあげることです。子どもなので、できないことは実際多いです。だけど「本当はこうやりたかったんだよね」とよく見てあげることが大切でしょう。

A.得意分野にこだわっていても大丈夫です。

明彦さん:子どもは自分でも何に困っているのかわかっていないことがよくあります。やり始めると楽しくなります。どんな課題を出しても、自分の得意分野の土俵で表現して、すごい!と言わせる子もいます。

【プロフィール:木村明彦(きむら・あきひこ)・木村美幸(きむら・みゆき)】

図工ランドは、お絵描きや工作をまんべんなく楽しめる工作造形、絵画教室です。木村明彦ランド長(63)は、東京芸術大学美術学部建築科卒の一級建築士。木村美幸副ランド長(62)は筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒の一級建築士。2005年、自身の子どものために図工ランドを設立し、現在は東京都内で目黒本校を拠点に5カ所の教室を運営。会員数は600人超。正解のない未来に対応する自律型人材を育成中。子どもの「創造性」や「デザイン力」を育む、楽しくてためになるカリキュラムを提供しています。

撮影:篠田英美

小川真吾
小川真吾

1985年生まれ。千葉県出身。ウェブメディア運営企業で、編集ディレクターやクリエイティブディレクターを経験した後、2019年に朝日新聞社へ入社。小学生のころは山遊びやサッカーに夢中でした。趣味は、音楽、映画、写真、料理などです。

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