2021.03.03
学びインタビュー ゆきどっぐ

「Life is Tech!」の讃井康智氏と語る 「プログラミング教育と未来」

一生モノの学び体質を作る『戦略的ほったらかし教育』を発信する岩田かおりさん。招待制の音声配信SNS「Clubhouse(クラブハウス)」で、公教育や民間教育に携わるゲストを招いた対談連続企画「岩田かおりのここだけの教育話」を、ファシリテーターの教育系ライター洪愛舜さんとともに開催しています。
2月18日は、「教育×IT×エンターテイメント」でプログラミング教育を提供する「Life is Tech!」(ライフイズテック)の讃井康智(さぬい・やすとも)取締役を招き、「プログラミング教育と未来」について話しました。Clubhouseで事前に参加者に許可を得たうえで、対談内容を記事化しました。

人を喜ばせる体験で、世界が広がる

岩田かおりさん:この対談では、情報メタボにならずに我が家流の子育てをするポイントを伝えています。今回はプログラミング教育の最先端を行く讃井さんをお呼びしました。

讃井康智さん:よろしくお願いします。ライフイズテックは家庭や学校向けに、中高生がITを使ったモノづくりを学べる講座や教材を提供しています。

2010年に中高生向けのサマーキャンプとして誕生。当時はiPhoneなどが発売され、ITの将来性が見えていた頃でしたが、プログラミングを学ぶ場所は増えておらず、IT業界で唯一、時計の針が20年間止まっている領域と呼ばれていました。

洪愛舜さん:確かに。当時は一般的ではありませんでしたね。

讃井:僕自身、高校生の頃にメディアアートを作りたかったんですが、諦めた経験があるんです。福岡県在住だったので、上京したり、大学生になったりしないとできないと思いこんでいました。

だからこそ事業をスタートさせ、講座や教材などの環境を整えたんです。離島や山間部でも学べるようにオンライン講座もスタートさせ、2018年には世界で初めてディズニーとコラボレートした中高生向けのプログラミング教材「テクノロジア魔法学校」をリリースしました。

岩田:讃井さんは講座では、「イカさん」というあだ名で子どもたちに親しまれていますよね。

讃井:「先生」って緊張しちゃうじゃないですか。子どももやりたいことを言えなくなってしまう。

僕たちが企画している教室はそういう場所じゃない。もっと近い距離感で、子どもたちが創りたいものや好きなことをワイワイ言える場を作りたかったんです。

岩田:距離を縮めるのに一役買っているのが大学生のメンターですよね。大人と子どもの関係性から一歩抜きんでた存在です。

讃井:そうですね。5~6人の参加者にメンターが1人つきます。メンターは厳しい選考をくぐり抜けた後、ITスキルだけでなく、ファシリテーションスキルなどを習得するために100時間以上の研修を受けるんです。だから子どもたちからの評判はいいですよ。大学に進学してメンターとして戻ってくる子も増えました。

洪:メンターの存在は、参加者にとってのロールモデルにもなりますよね。

讃井:そうなんです。私たちの講座は一見するとITで作品作りをしているだけに思われますが、それは体験の20%ぐらいを占めるものに過ぎません。
メンターとの出会いで身近な目標ができる。そして、アイデアを実現する面白さを知り、周りの人が自分の作品に見入ったり遊んだりしているのを見て、「人を喜ばせられる自分」に気付く。その瞬間に世界が広がっていくんです。

ライフイズテックの中高生ITキャンプにて。大学生メンターは憧れの存在、身近なロールモデルに。

可能性があると感じさせるのは、大人の役割

洪:講座をきっかけに、自分の可能性に気づくわけですね。

讃井:そうです。私達が地方で講座をやった時に、「東京都の子はもっと進んでいますよね?」と言われることがしばしばあります。でも、差はないんです。生まれた場所だったり、ましてや男女の性差などで、プログラミングのポテンシャルが変わるわけじゃありません。
なんなら、プログラミングを学ぶ機会が少ない分、地方在住の子どもたちのほうが集中して取り組むので、作品の仕上がりが良かったりする。

ただ1点、東京と地方で違いがあるとすれば「可能性の認識差」があると思います。

地方だとプログラミングの勉強をしたくてもそもそも学べる場所がなく、子どもたちもプログラミングを中高生のうちに学べると気づいていない可能性があります。一方、東京在住なら、主要駅にプログラミング教室があり、アプリを自分で作って表彰された先輩などの情報も耳に入りやすく、中高生のうちにプログラミングを学べると当たり前のように知っているわけです。

洪:職業体験で中学生が企業などへ行く際も、東京ならIT企業などに行く機会がありますが、地方だと限られますよね。

讃井:そう。だからこそ、オンラインの講座や教材も作ったんです。パソコンやインターネットが普及すると、平等な機会が与えられたと思われがちですが、自分は何ができるかという可能性の認識は最初から平等ではありません。そこを埋められるのは、子どもたちの近くにいる大人の声かけです。インターネットが普及しようと、保護者や教師の役割は大きいのです。

まずはアプリで「楽しい」と感じる体験を

岩田:プログラミングを始める前の未就学児や小学生の保護者向けに、プログラミングへの関心を引き出すおすすめの教材などはありますか? 

讃井:いきなりプログラミングをやらせようと思わなくて大丈夫です。まずは保護者のスマートフォンなどを使い、ITを使って楽しく遊ぶ経験をしてほしいですね。特に創る体験は大事で、YouTubeごっこをしながら動画を撮影・編集したり、レゴを使ってコマ撮りの人形劇を作ったりするのもいいです。

洪:話題のテレビ番組「PUI PUI モルカー」もコマ撮りの人形劇ですね。

讃井:コマ撮りですよね。コマ撮リに挑戦するなら「Stop Motion Studi‪o ‬」という無料アプリがおすすめです。あとは、撮影した動画を逆再生できるアプリ「Reverse Ca‪m‬」も面白いですよ。‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬

岩田:外遊びや問題集を解くのに加えて、アプリで遊ぶ時間を取り入れるんですね。

讃井:アナログかデジタルか、という考え方ではなく、創造的活動が生まれるツールとしてアプリが加わったと考えるといいと思います。

さらにプログラミングに興味を持ったのなら、「Minecraft」から入るのもおすすめです。ゲームの中で何かを作ったり、組み合わせたりする経験は、プログラミングの基礎を学ぶのに役立ちます。あとは小学生だと「Scratch 」、「Hour of Code 」、「スプリンギン 」、「Qureo 」、「KOOV」などのツール・教材や、「Tech Kids School 」、「ロボ団 」などのスクールも創造的な体験ができていいですね。中高生向けはライフイズテックのITキャンプやオンライン教材の「テクノロジア魔法学校」もおすすめです。

小学校高学年であればテキストコーディングを始めるのもいいですが、無理はしなくていいです。大事なのは特定のプログラミング言語を学ぶことより、創ることにのめり込む体験です。

洪:のめり込むと、そのうち物足りなくなりますもんね。

岩田:飽きてくるのを待って、次のステップに進むといいですね。

ITキャンプでは同年代の仲間から刺激を受け、互いに切磋琢磨しながらITでクリエイティブにものづくりをする。

異分野の才能に出会い、互いをリスペクトする子どもたち

岩田:昨年、SONY主催でライフイズテックが運営されていた「ENTERTAINMENT CAMP」のオーディションに娘が参加しました。

讃井:コロナ禍なのでオンラインでの開催でしたね。映像、音楽、3DCGのクリエイターとダンサーという4人一組で、最先端の映像作品を作る企画でした。

岩田:娘はダンサー枠で参加したんです。もともとスポーツばかりやっていたのですが、「プログラミングとダンスが融合するとこんな作品が作れるんだ」と感動していました。「また行きたい」って言っています。

洪:「ENTERTAINMENT CAMP」をきっかけに、ITやプログラミングにも興味を持たれたんですか?

岩田:そうなんです。中高生になると、先輩や大人から影響を受けるようになりますよね。メンターのおかげで身近なビジョンを描けたみたいです。そして、そこで出会った友だちが頑張っている姿に今も刺激をもらっています。

讃井:家庭や学校以外の第3の刺激的な場を持つことは重要です。中高生の頃に同年代のさまざまな才能を持つ子どもと会う機会になって、「あの子はプログラミング、この子は映像制作が得意」とお互いをリスペクトしていくんです。

プログラミングや映像制作で活躍し、文化祭や生徒会活動などで学校でもスポットライトを受ける子たちもいます。それで自信がつき、不登校だった子が、学校に行けるようになったケースもありました。

楽しいが、「さらにやりたい」の源

岩田:素晴らしいですね。とはいえ、家庭で教育を押し付けすぎると子どもはやらなくなるから、戦略的にチラ見せしていくのが大事です。

讃井:そうですね。さっきのアプリにしても、講座にしても、楽しいという体験から入ってほしい。そこから好きなことや課題を見つけることで、発展していきます。

岩田:楽しいという気持ちこそ、「さらにやりたい」が湧き出る源になります。

讃井:幼い頃から「学びは楽しい」という体験を積み重ねることが大切です。幼少期には学びイコール遊び、すなわち楽しさが原点だったはずなのに、学校生活で楽しくないものに変わってしまうんです。「学びは本来、楽しいもの」。その意識付けができれば、将来に活きてくると思います。


プロフィール:讃井康智(さぬいやすとも)
1983年福岡市生まれ。久留米大学附設中高、東京大学教育学部卒業。リンクアンドモチベーション勤務を経て、独立。東京大学大学院教育学研究科に進学、学習科学者の故三宅なほみ・東京大学教育学研究科教授に師事。ライフイズテックには2010年に創業メンバーとして参画し、全国各地にプログラミング教育など21世紀型の学びを届けている。

岩田かおり(いわたかおり)
株式会社ママプロジェクトJapan代表。ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる親子講座『かおりメソッド』『天才ノート』主宰。子ども教育アドバイザー。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の想いから、独自の教育法を開発。3人(1男2女)の母。

洪愛舜(ほんえすん)
子育て・教育系ライター。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。編集プロダクションecon主宰。目黒駅前新聞編集長。著書に『もやもやガール卒業白書』(MMR)、絵本『すき!I like it!』(教育画劇)がある。立命館大学理工学部卒。1女1男2児の母。

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ゆきどっぐ
ゆきどっぐ

1986年生まれ。フリーランスの編集者・ライター。「文春オンライン」「品川経済新聞」などで執筆中。テーマは主に中学受験や子育て、地域情報、犬、漫画など。幼い頃に始めたピアノレッスンでは曲が弾けるまで毎日練習。そのおかげで、一つのことに向き合う大切さを学びました。

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