2021.03.04
学びインタビュー 秋音ゆう

東大生が起業 読書好きの子どもを育てる習い事「ヨンデミーオンライン」

「子どもが本を読まない」「読み聞かせは好きだけど、1人で読むのは苦手」。そんな悩みを持つ家庭は少なくありません。デジタルネイティブ世代の子どもたちが、本を楽しむにはどうしたら良いのでしょうか。子どもが読書好きになるオンラインサービスを提供する「Yondemy」CEOで、現役東大生の笹沼颯太さん(21)に聞きました。

デジタルネイティブ世代は「読書が苦手」なのか?

――デジタル化が進み、子どもたちの娯楽もYouTubeやテレビゲームが当たり前になりました。いまの子どもは本を読むのが苦手なのでしょうか?

塾講師をしているときに親御さんから「子どもがなかなか自分から本を読まない」という悩みを聞くことが多かったです。東大生の友だちと話していたら、みんな同じような相談を受けていることがわかりました。

――絵本の読み聞かせや紙芝居、アニメなどストーリーは楽しめるのに、本を1人で読むとなると敬遠してしまうのはなぜでしょうか。

読書が苦手と感じるのは、いくつか原因があります。まずは、文字を読むことに対する「苦手」や「難しい」という先入観があることです。また、読書感想文や音読などで初めて本を読む子に多いのが、「本=勉強」と感じること。勉強と捉えてしまうことから、苦手意識につながってしまいます。他に読書の好き嫌いに大きく影響するのは、本と出合うタイミングです。文字が読めても、ストーリーの意味がわからなければ、せっかく出合った本を楽しく読むことができません。「わからない」を「つまらない」と誤解してしまい、読書がさらに遠い存在になってしまいます。

――デジタルネイティブにとって、読書は遠い存在になりやすいのでしょうか?

いまの子どもたちにとって、受動的に情報が入ることは当たり前。「ゲームやYouTubeが好き」と「読書が好き」は両立します。私自身、ゲームも本と同じくらい大好きでした。ただ読書の楽しさを知らないだけかもしれません。

ヨンデミーオンライン
「Yondemy」が提供する、子どもが読書を好きになるためのオンラインの習い事です。たくさんの本を読むことを通して、本の楽しみ方だけでなく、読解力や学ぶ力を身につけられるとしています。対象年齢は5〜14歳。東大生が開発した「AI司書」が、子ども一人ひとりの好みや読む力に合わせて本を選んでくれる仕組みです。すすめられた本は、図書館で借りるなど各家庭で用意します。アプリを使ったレッスンが特徴。クイズ式のレッスンなどで、だんだん感想文が書けるようになるステップが用意されています。読書の楽しみ方から読解力の形成までをサポートします。月額2980円(税込み)。

子どもが読書好きになる3つのコツ

――それでは、どうしたら本を好きになってくれるのでしょうか。

読書が好きになるには、3つのコツがあると思います。

  1. 本のレベルを子どもに合わせる
  2. 親の読ませたい本を強制しない
  3. 手に取りやすいところに本を置く

1人で読み終えると自信がつく

読み聞かせで理解できる本だからといって、いきなり1人で読めるわけではありません。聞くことと読むことの理解には差があります。このことを親がよく理解してあげてください。文字や言葉の理解度に合わせて、場合によっては少しレベルを下げた本で一人読みを始めてみましょう。

年齢より幼い本を読むことは決してマイナスではありません。大切なのは「1人で1冊読み終える」という経験です。

1人で読めるという自信がつくと、だんだんと読書の楽しさにも気づきます。逆に難しい本で全然ページが進まないと、どんどん嫌になってしまいます。これは大人もそうですよね。

そしてステップアップも大切。スムーズに読めるようになったら、少しレベルを上げましょう。だいたい8割理解できる本がおすすめです。悪戦苦闘していたら、1回レベルを戻す。この繰り返しを重ねると読書に慣れていきます。

子どもが楽しいと思える本を選ぶ

――親からすると、「この本を読んで欲しい」という思いはありますよね。

一番大事なことは、「親の読ませたい本を強制しない」ことです。

テストや受験勉強のための本、自分が面白かった本など、親は自分が読ませたい本を与えがちです。その中に面白い本もあるかもしれませんが、「子どもが楽しいと思えるかどうか」の方が大切です。

私はファンタジーが大好きで、伝記や歴史ものは苦手でした。母は歴史小説が好きでいくつか薦められましたが、なかなかハマらなくて…。でも強制はされず、好きな本を読み続けていました。薦められた中で「十二国記」(作・小野不由美)など面白くて全巻読んだ本もあったんですけどね。

――読書感想文にも、「課題図書」がありますよね。

「読書感想文が苦手」となる理由もそこにあります。指定された本をみんなが好きなわけではありません。楽しいと思えるお話なら、自然と感想が言いたくなるもの。「好き」「面白い」という気持ちが重要です。

すぐ手に取れる場所や目につく場所に本を置く環境作りも大切です。いつも目に入ると気になり自然と手が伸びます。同じように、親が読書を楽しむ姿を見せることもとても効果的です。楽しむ姿に「自分も読んでみたい」と感じると思います。

現役東大生が開発した「AI司書」の仕組みとは?

――「AI司書」とはいったいどのような仕組みなのでしょうか。

私たちが開発したAI司書には1000冊以上の児童書データが入っています。全国の司書さんたちと協働で分析しました。AI司書は、この児童書データと、実際に本を読んでもらったあとに子ども本人に答えてもらう本の評価を照らし合わせて、その子がどんなストーリーが好きなのかを分析します。この分析からわかる子どもの好みと、ストーリーの要素がマッチする本を選書します。

――AIと好き・嫌いなどの感情はリンクしないイメージですが、子どもの好みに合わせた選書が可能なのでしょうか。

司書さんたちも本の内容を丸暗記しているわけではありません。例えば、動物が主人公の冒険小説という要素から「かいけつゾロリシリーズ」などを選書します。児童書の分析は人間が行ない、子どもの好みとのマッチ作業にAIを使います。最終的に選書の良し悪し、読後の感想などは人間が確認しています。

――笹沼さんをはじめとするヨンデミー講師の分析や想いが込められて、「人間味あふれる」AI司書になっているんですね。読書がのばす子どもの未来は、どのように考えていますか。

ヨンデミーオンラインのロゴには、「読書がつながる、未来の教室」という文言をつけました。読書は時には親子、またある時には友達や先生など人とのつながりを生みます。私にとっては、小学校時代に親友と競い合うように本を読んだことが熱中するきっかけでした。読書は個人で楽しむイメージですが、誰かとストーリーや感想を共有し合うのって、とても楽しいですよね。ヨンデミーオンラインでも今後、読書を通じて、子どもたち同士がつながる場を強化したいと思っています。

情報はスルー、知識を得ようとする読書が学ぶ力を育てる

――読書をする子は、やはり頭が良くなるのでしょうか?

読書は学ぶ手段のひとつです。私たちはただ読書を教えるのではなく、読書から学ぶ楽しさを知ってほしいという思いがあります。

大人になっていくにつれ、学校の授業のように受動的に学ぶ機会が減ります。そうなると本やネットの情報から、主体的に自分で知識を得ることが必要です。でもそれは読書ができないと難しいですよね。

いまの子どもたちは生まれた時から情報があふれている世界にいます。つまり、「情報=スルーしてしまうもの」という感覚です。その中から自分で価値を見つけ出して、必要なものを選ぶ力は、読むことができて初めて身につきます。文字から情報を取ることと、読書はまったく違う体験です。

本の面白さを体感して

「自分で読んで考える」「自分で探して読む」。そんな力が将来の学びにつながっていくと思います。読書は長期的な学びにつながる大切な習慣になります。

本の面白さは体感しないとわかりません。たくさんの子どもたちが読書の楽しさに気づけるように、お手伝いをしたいです。


プロフィール

笹沼颯太(ささぬま・そうた)

東京大学経済学部3年生。筑波大学附属駒場高等学校卒業。2020年12月に東大生の友人と一緒に、「Yondemy」を起業。子どものころに好きだった本は「ミロとまほうのいし」「北極のミーシカムーシカ」。


撮影:伊ケ崎忍


秋音ゆう
秋音ゆう

専業主婦からライターへ転身。教育・絵本・多様性を軸に、子育てメディアを中心に執筆。自身の経験や3人の子育てで感じた想いから「みんなが生きやすい社会」を伝えたい。子どもの頃に夢中になったことは「お話作り」。「エルマーの冒険」のようなお話を創作してノートに書いていました。今では長男が絵本作りにハマっています。

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