2021.03.12
学びインタビュー ゆきどっぐ

「math channel」の横山明日希氏と語る 「算数・数学に特化した遊び」

ガミガミ言わなくても勉強する子に育てる「戦略的ほったらかし教育」を発信する岩田かおりさん。招待制の音声配信SNS「Clubhouse(クラブハウス)」で、ゲストを招いた対談連続企画「岩田かおりのここだけの教育話」を、ファシリテーターの教育系ライター洪愛舜さんとともに開催しています。2月23日は、算数・数学の体験型ワークショップを運営する「math channel(マスチャンネル)」代表・横山明日希(よこやま・あすき)さんを招き、「算数・数学に特化した遊び」について話しました。Clubhouseで事前に参加者に許可を得たうえで、対談内容を記事化しました。

楽しさだけでなく、知的発見が得られるゲームを

岩田かおりさん(以下、敬称略):この対談は、情報が多すぎて、本来は子育てを好転させるための教育情報によって子育てがより難解になるというジレンマを抱えているママパパからの悩み相談が多く寄せられているため、もっと軽快に子育てできる鍵をお届けしたいという想いから始まりました。今回は面白い算数体験教室を展開する横山明日希さんをお呼びしています。

横山明日希さん:はじめまして。大学生の頃から算数・数学の面白さを伝える「数学のお兄さん」として活動してきました。「math channel」では「算数・数学の楽しい体験を届ける」をコンセプトに、算数教室の運営や商業施設でのイベント、教材・書籍などのコンテンツ提供をしています。

岩田:算数って、「そろばんか、公文式か」と習い事で悩む保護者が多いですよね。それって、「カルシウム摂取のために、小魚と牛乳のどちらを食べるか」程度の話だと私は思っています。好きな方を選べばいい。でも、どちらも苦手な子がいたら、違う選択肢を提供したい。それが横山さんの「math channel」だと思っています。

横山:習い事の相談はよく受けます。習い事って短い時間ですが、学びが凝縮された大事なひと時ですよね。

でも、算数に関しては、習い事以外の時間でどう向き合うかも大切だと思います。

岩田:習い事以外の時間といえばゲームを使った遊びがありますね。以前、この登壇メンバーでmath channelの発売する九九カードゲーム「kukupon!(くくぽん)」で遊びました。あれは面白かった!

横山:ありがとうございます。「kukupon!」は、九九で神経衰弱ができるように開発しました。例えば一方が2の段のカードだったら、7とかけたときの14の答えカードがゲットできます。ほかにも、「九九かるた」など複数の遊び方が楽しめるゲームです。

kukupon!の他に、math channelが開発した2つのサイコロで遊ぶ足し算のすごろくでも遊びました。難易度に合わせてゆるやかにルールを変えられるのも良い。

岩田:九九って、アプローチは暗記がほとんど。無理にやらせようとすると親子の溝が深まるんですよね。ゲームのおかげで、導入がスムーズになると思います。

横山:そうですね。「kukupon!」は九九を学習する前でも楽しめるように設計しています。

僕たちが作るゲームは楽しさだけでなく、知的発見や学びがあるものを目指しています。そうすることで、「九九って触れれば触れるほど得られるものがある」という意識につながると思うんです。

洪愛舜さん:九九表では気付かないけど、ゲームだと法則性を見つけられますね。

横山:そうなんです。主体的に手を動かして発見した喜びは印象に残ります。それだけでも苦手をなくすのに役立ちますから。

思考錯誤が苦手な子もカードを使えば挑戦できる

洪:岩田さんの「戦略的ほったらかし教育」も、導入としてカードゲームなどのアナログゲームをすすめています。

岩田:未就学児や小学生は、問題解決能力をおもちゃで育てられると思うんです。とくにアナログゲームは、テレビゲームと比べて即時性ではない喜びが感じられます。この過程は、一筋縄でいかないものに食らいついていく学びにつながると思うんです。

横山:思考錯誤するんですよね。ただ、気を付けないといけないのは、思考錯誤に耐えられる精神体力がないと、途中であきらめてしまうことです。

そこで開発したのが「算数脳をつくる かずそろえ計算カードパズル」(幻冬舎)。0~9のカードを使って式を完成させるパズルです。カードを並び変えるのは、書くよりも短い時間でできる。だから精神体力が足りない子も何度も挑戦して達成感を得られます。

このように「カードを使う」だけでなく「探す」「唱える」遊びで、効率よく思考錯誤ができるのは重要です。

岩田:習い事の月謝が必要なく、家でできるのもいいですよね。私は子どもが3人いるから、教育費はどれだけ節約してもかかってしまう。

それに幼いころって家庭の文化を作るチャンスです。遊んで学ぶ文化が根付けば、中高生になっても続けられますから。

math channelのワークショップで、子どもたちは積み木を使って遊びながら数や量、形の感覚を獲得していきます

「算数の正解は一つ」じゃない

洪:アナログゲームを使って算数を体験する面白さはわかりました。一方で、オンライン講座も開催されていますよね。オンラインでも算数の面白さって体験できるのでしょうか?

横山:算数の楽しみ方っていくらでもあるんです。オンラインでは、問題を深めて気付いた発見を自分の言葉で問題にしています。

例えば「円に線を引いて分けよう」というテーマの場合、円に1本線を引くとかけらはいくつに分けられるか。さらに線を増やしたらどうか。線は縦にひくか、横にひくかなど、問いかけをします。そこで、「かけらの数が最も多くなるように3本の線をひくには、どうするか」と出題するんです。

そうやって問題を深めていくことで、法則性に気付く子もいます。

岩田:オンラインで解答はどうやって共有するんですか? 

横山:できたら「できた」って挙手して、カメラに移して画面越しに見せてもらいます。違ったらもう一度挑戦してもらいます。講座では「間違えるのはいいことだ」と伝えています。だから能動的なアクションにしているんです。

洪:さきほどの円の出題、解けました! 実際にやってみると、普段働いていない脳の部分が活性化された気がします。

横山:脳のトレーニングになりますよね。作問でも脳の働く箇所は違うし、作った問題を「面白い問題だね」と評価してもらうのも一つの楽しみ方です。

岩田:正解にたどり着くだけがゴールじゃないということですね。でも算数って「答えは一つ」というイメージが強いのではないでしょうか。

横山:授業だと「算数の正解は一つ」というイメージがありますけど、日常生活ではそうでもない。例えば算数の図形を身の回りからいくつ見つけられるか。三角形を探すと、道路の標識やトイレのマークの胴体などを見つけます。厳密に言えば端が丸いなどの理由から正確な三角形と言えませんが、そのくらい自由な発想で物事を見ていいんです。

知識だけじゃなく、数や量、形の感覚も大事

洪:中学受験をしたご家庭で、国・理・社は暗記をして追い上げで成績が伸びたけど、算数だけは最後まで伸びなかったと嘆いていました。やっぱり算数は簡単には伸びにくいんでしょうか?

横山:算数には積み重ねの部分があり、時には苦手な単元に戻る必要があります。それをおろそかにすると、受験対策をしても薄い膜のような知識になって崩れやすい。それに数や量、形の感覚が抜けていると、積み重ねが難しい部分もあると思います。

岩田:数や量、形の感覚は、未就学児や小学生のころから実体験を積むべきですか?

横山:そうですね。やることはシンプルで、文章問題を図に書いてみたり、パズルや積み木を使ったりするのもいいです。式を理解した後に実物を動かすと理解につながります。物体をひっくり返す、まわす、横に滑らせるという体験だけでもいいです。

洪:そういえば、math channeのYouTubeチャンネルで積み木を使った算数ワークを公開されましたね。


横山:積み木は小学生の算数から高校の数学まで役に立つ、という動画です。動画だけで指導法をすべて教えるのは難しいので、試験的に公開しました。

保護者の中には、実物を使って学ぶ体験をしたことのない方も多いと思います。今後、子どもの感覚を体験できる保護者向けの講座もしたいですね。

岩田:大人向けの書籍も出版されていますもんね。保護者が楽しんでいると、子どもにもいい効果があるのでこれからの発展に期待したいです。


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プロフィール:横山明日希(よこやまあすき)
株式会社math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。早稲田大学大学院数学応用数理専攻修了。幼児から大人まで幅広く数学・算数の楽しさを伝える「数学のお兄さん」。公益財団法人日本数学検定協会認定資格「幼児さんすうインストラクター」シニアインストラクター。『笑う数学』(KADOKAWA)、『理数センスを鍛える・算数王パズル』(小学館)、『文系もハマる数学』(青春出版社)等、著書・共著書10冊。

岩田かおり(いわたかおり)
株式会社ママプロジェクトJapan代表。ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる親子講座『かおりメソッド』『天才ノート』主宰。子ども教育アドバイザー。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の想いから、独自の教育法を開発。3人(1男2女)の母。

洪愛舜(ほんえすん)
子育て・教育系ライター。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。編集プロダクションecon主宰。目黒駅前新聞編集長。著書に『もやもやガール卒業白書』(MMR)、絵本『すき!I like it!』(教育画劇)がある。立命館大学理工学部卒。1女1男2児の母。

ゆきどっぐ
ゆきどっぐ

1986年生まれ。フリーランスの編集者・ライター。「文春オンライン」「品川経済新聞」などで執筆中。テーマは主に中学受験や子育て、地域情報、犬、漫画など。幼い頃に始めたピアノレッスンでは曲が弾けるまで毎日練習。そのおかげで、一つのことに向き合う大切さを学びました。

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