2021.03.17
学びインタビュー みらのび編集部

ボーク重子さんに聞く 第1回:子どもを伸ばす「非認知能力」って、どんな力なの?

最近、注目を集めている子どもの「非認知能力」。2017年に長女のスカイさん(22)が米国の大学奨学金コンクールで「全米最優秀女子高校生」に選ばれた、米・ワシントンDC在住のボーク重子さん(55)に、非認知能力の大切さについて聞きました。ボークさんは、非認知能力を育む教育こそが、心を強くする「世界最高の子育て」だとしています。「みらのび」の平岡妙子編集長がインタビューし、2回に分けてお届けします。

第1回:「非認知能力」って、どんな力なの?
第2回:「非認知能力」を身につけるにはどうしたらいいの?

非認知能力は、数値では測れない人間の土台

大学奨学金コンクールで全米最優秀女子高校生に選ばれた長女スカイさん

――ボークさんの娘さんは、全米最優秀女子高校生を受賞されたということですが、これまで勉強しろと言ったことがないということに驚きました。その代わりに何を大切にされていたのですか?

心がけていたのは、家の中で何でも話せる環境を作ることです。「この子は何が好きなんだろう」「何を考えているんだろう」というのは対話の中でわかること。対話をしながら、娘が思っていることを表現できる、安心・安全な場所を作ることを心がけていました。

――親としては「勉強しなさい」と、つい言いたくなってしまいますよね。

そうですね。おそらく大きな助けとなったのは、娘が通っていたアメリカの学校では宿題が出されなかったことです。「勉強しなさい」と言う必要がなかったのです。子どもたちは日々ものすごく大変な中に生きています。学校で勉強して、人間関係があって、他にもやらなくてはいけないことがあって…。それをやって、帰宅後にまた「勉強しろ」と言われるのは、大人が会社で仕事を終えて帰ってきてから。家で残業するのと同じようなこと。

休むことによって、もっと学ぶことができると思います。学校側からも「宿題なんてやってる暇があったら、外であそんでください。空想してください。学校で十分勉強はしています」と言われていました。

――家の中は休む、くつろげる場所であるという環境作りが大事なのでしょうか?

ものすごく大事です。子どもたちも家から一歩出たら、いろんな意味で戦っているんです。家に帰ってきてまで自分でいられない環境だったら、子どもはいつ休むのかな?と思います。

なぜ勉強させる必要がなかったかというと「子どもが自分で勉強するから」です。

学校が好奇心を引き出して、子ども自らがやってみたいと思うように導くわけです。そうすると好奇心・探究心が育まれていき、家のなかでも疑問がわけば、「ママこれ何だと思う?」と聞いてきて、言わなくてもやり始めるのです。これがまさに「非認知能力」です。

やることを自ら探し出す力が大事

――日本の教育と全然違いますね。

「これをやりなさい」と言われると、自分から「何をすべきか」考える必要がなくなります。「やりなさい」と言われたことをやっていればいいので、探究心が育まれないわけです。

正解がある問題に、確実な方法でいかに早く正解を出すかという思考力は育まれますが、自ら課題や問題を見つけていく力が身につかない。「調べたい!知りたい!学びたい!」という気持ちが育まれないのです。

――アメリカの教育では、「調べたい!知りたい!学びたい!」という気持ちに重点を置いているのですか?

そうですね。子どもたちが自律した学習者になっていかなかったら、大人になって困ります。「人生100年時代」と言われる中、探究心・好奇心を持たずに生きていたら、定年後に「やりたいことが何もない…」という状態で、何十年も生きることになります。いまの仕事が明日無くなるかもしれないし、いまはない仕事が明日生まれる中で、やることを自ら探していくことが必要。この能力がなければ行き詰まってしまいます。

心が強くなり、人生の満足度につながる

――アメリカの教育で大事にしている「非認知能力」とは、どんな能力なのでしょうか?

簡単にいうと、目に見えない能力です。認知能力は、点数や偏差値、IQなど数字で目に見える能力です。跳び箱3段飛べるようになった、というのも数値で測れる力ですよね。

非認知能力は、それとは真逆の、数値化できない能力のことです。例えば自信や自己肯定感、柔軟性、自制心、共感力、想像力や主体性など、さまざまな力があります。非認知能力を高めることによって、心が強くなります。自分でやり抜く力がつくので、結果的に学力も高くなります。数値では測れないような、魅力的な人間性の土台となる力ですね。

「非認知能力」の重要さは、2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・へックマン教授が、教育経済学の立場から提示しています。幼児期に非認知能力を身につけると、40歳になった時に人生における満足度や成功度に大きな差が出たという研究です。

――それは「みらのび」で「未来型スキル」と定義づけた力と同じですね。「みらのび」では、OECD(経済協力開発機構)などの考え方を参考にして、子どもが身につけて欲しい力を「未来型スキル」としました。子どもの伸ばしたい力から、習い事を探せる仕組みを作っています。

12の未来型スキルはとても素晴らしいと思います。前向きに「チャレンジ」するには精神的にも体力的にも回復力がないとできないので、「フィジカル」も大切です。最優秀女子高校生の5つのカテゴリの中のひとつなんですよ。

「アート」も素晴らしい!私の中で学校選びの基準のひとつは、アート活動に力を入れているかどうか、です。子どもの想像力には限界がありません。これを発揮できる場所は、アートの世界だと思っています。私は幼稚園の見学をした時に、アートルームを見てあまりにも大人の指導が入っているところ、ゾウさんはこう書くべき、鳥の羽の数などが決まっているような学校は選びませんでした。

「ロジカル」や、「グローバル」にはばたく力も大事です。「グローバル」というのは、英語力だけではなく、人と話すことなので、共感する力が含まれていると思います。

「ユニーク」という独自性が入っているのが最高ですね。

アメリカが本場のコーチングですが、そのまま日本に持ってきてもうまくいかない。必要とされる能力の育まれ方は、日米で違います。私が日本でコーチングする時には、特に「ユニーク」を強調します。日本は「出る杭は打たれる」風潮がありますよね。でも、出る杭くらいにならないと生きていけない、違いこそがいいよねという社会になっていった時に、本当の意味で多様性が実現するはずです。

実は日本の中も、すでに多様な社会です。LGBTやいろいろな家族の形、身体的なこと、学びの形など十分多様な様式が広がっているのですから、独自性は当たり前になって欲しい。だからユニークさを認め、受け入れ、そして自らのユニークさという個性を発揮していくこと、これはとても大事です。

非認知能力は、10歳までが一番育まれやすい

12歳のときの長女スカイさんとボーク重子さん。愛犬を飼い始めたばかりのころ。

――本当に大事な力ばかりです。「未来型スキル」はこれから伸ばしていきたい力ととらえていますが、その基盤となる「非認知能力」は、いつまでに身につけた方が良いとかありますか?

私は自著の中では、0歳から10歳の時期が、一番育まれやすい時期ではあるとお伝えしています。ただ、非認知能力は何歳からでも育むことができます。ですが、年齢を重ねれば重ねるほど、お友だちとの比較や周りからの評価、社会や親の思い込みなどいろんなものが押し付けられ、どんどん本来あるべき自分が見えにくくなります。

私は大人になってから非認知能力を知りましたが、これを伸ばそうと思うと、自分と向き合う作業が必要だとわかりました。大きくなればなるほど、比較や思い込みを外す分、時間がかかって大変なことはあるのですが、いくつになっても、けっして遅すぎるということはありません。

プロフィール:ボーク重子(ぼーく・しげこ)

1965年生まれ。福島県出身。ライフコーチ。著書に「『非認知能力』の育て方」(小学館)や「世界最高の子育て」(ダイヤモンド社)など。

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編集協力:秋音ゆう


みらのび編集部
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