2021.03.19
学びインタビュー みらのび編集部

ボーク重子さんに聞く 第2回:「非認知能力」の身につけ方

米・ワシントンDC在住のボーク重子さん(55)に、非認知能力の大切さについて、「みらのび」の平岡妙子編集長が聞きました。2017年に長女(22)が米国の大学奨学金コンクールで「全米最優秀女子高校生」に選ばれたことから、ボークさんは子育てや教育についての執筆や講演活動をしています。第2回目は、非認知能力の身につけ方についてお伝えします。

第1回:「非認知能力」って、どんな力なの?
第2回:「非認知能力」を身につけるにはどうしたらいいの?

パッションが非認知能力の入り口

長女スカイさんの高校卒業式での親子3人

――家庭で非認知能力を伸ばすために心がけることはありますか?

たった一つ大事なことは、対話です。子どもが何か言った時に決して否定しない。まずは子どもが言ったことを受け止める。聞き入れる。子どもの意見やあるがままの姿を受け入れることが重要です。家庭で話を聞いてもらい、肯定してもらうことは、安心感につながります。

たとえ変だなと思うことを言っていても「それってどういうこと?ママに教えて」「なるほどそういう考え方もあるのね」とどんどん聞き出してあげる。そうすると論理的に考えられるようになったり、おかしい点に自分で気がつくようになったりして、思考力が身に付きます。どうしたら伝わるかも考えるようになりますね。

わが家では食卓の時間を対話の時間と決めています。携帯もテレビも禁止です。

分量としては子供が8、親が2、でとにかく聞いてあげる。親は話さなくてもいいんです。誰だって自分の子供のことはすごく知りたいですよね。

――大人は「自分はこうやってうまくいった」とか、つい自分のことばかり話してしまうことがありますよね。

自分の経験を話すことは悪くないのですが「私はこうだったけど、あなたはどう思う?」と、話を振るといいですね。子どもとは世代もバックグランドも違うので。また、成功談より失敗談を話すと、より子どもの学びにつながります。

話を聞くことで、自分の意見が言える子が育つ

――親の経験談を話して終えるのではなく、子どもの考えを聞くことが重要なんですね。

子供の意見を聞くことが必要ですね。これからグローバル化やAI化が進む中で、自分の意見を言えないと生きていけません。それが人間の最大の強みです。

自分はどう思うのか、考える環境を作ることが大切です。それには何でも言える環境がないとだめですね。

親が言ってほしい正解を考え、顔色を伺って答えるようになってしまうと、自分で考える癖がつきません。

――大きくなると、親が言わせているつもりはなくても、子どもが親の望むことを察知して話す子もいますよね。

子どもっていうのは、環境を選ぶことも作ることもできません。与えられた環境の中に自分を当てはめていきます。そうでないと生きていけないから。だからこそ、親の姿勢が大切です。

非認知能力は、最近知られた言葉です。私たちの世代には、はっきり言って邪魔な能力だったかもしれません。先生の教えや授業で覚えたことを、みんな同じようにやることが大事だったので個性は邪魔だったんです。言った通りにやることがいい子でした。

そんな世界で育ってきた私たちが「個性を持ちなさい」「好きなことはなんでもやっていいのよ」と子どもに言っても、心には響かない。言葉では理解できても、どういうことなのか伝わるように導くためには、親が実践することが大切です。

好きなものへの熱中が、非認知能力を育む

――親自身も、自分の好きなことを見つけるのが難しいですよね。母親父親の役割を演じてきた部分もあると思うので。

いまの親は「子どもに好きなことを見つけて欲しい」と願う人が増えていますが、その一方で、ゲームやYouTubeなどの好きなことばかりやらせても大丈夫なのかと不安を抱える親も多いです。

好きなことを持つことは、ありとあらゆる非認知能力を育んでくれます。パッション(情熱)は非認知能力の入口だと言っています。好きなことをやっているときの心は、ポジティブで自分自身のことが好きな状態です。

熱中することがある子どもは、やりたくないけどやらなきゃいけないことの処理能力も身に付きます。ハッピーな状態なので失敗から学ぼうと前向きになります。

好きなことをやめさせるのは、逆効果です。ゲームであったとしても、やりたいことは時間を決めて集中してやらせる。そのあと、やらなきゃいけないことをやるようにすることで、時間感覚も身に付きます。

最近のボーク重子さんと長女スカイさん。ニューヨークで。

パッションを見つけるための習い事を

――「みらのび」では、「すべての子どもに夢中を」と掲げています。習い事などを通して、夢中になれることを見つけてほしいと思っています。

習い事はパッションを見つけるためにあると思っています。技量を身につけ、誰かより秀でるためにあるのではなくて、楽しむために習い事はあるのです。

大人もそうですが、夢中になるものが何にもなくてただ生きていくだけでは淋しすぎます。何か夢中になれるものがある人生は大きく違います。

――人生の楽しさや深みを見つけるためにも、習い事は大事なのですね。

娘も15個以上習い事をしていました。

――すごい!その中には、すぐやめてしまうものもあったのですか?

わが家ではやめる時期を決めて、習い事を始めています。何かやってみたいものがあれば、最小単位で申し込みます。やってみて楽しかったら、またその期間を伸ばす。

途中でやめたくなったら、最初に決めた期間までは頑張ろうねと言っています。その期間まではやり抜いて、達成感を持った上でやめるんです。やめる時期を決めて始めたので、「途中でやめた」体験ではなく、「ここまで頑張ったね」という成功体験を重ねました。

期間を決めてやることで、すべてを成功体験にする

――なるほど。「すぐにやめちゃった」という否定的な体験にしないということですね。

成功体験に変えることが、すごく重要です。やってみなくてはわかりません。やる前から「これが好きでしょ。ずっと続けなさい」と言うと選択肢が狭まります。すぐやめる子になったら困りますという方が多いですが、私は「すぐやめてもいいんじゃないですか?」と言っています。だって体験してみないとわからないから。

――すごく面白いですね。「やめ癖をつけたくない」という理由で、始める前からかなり厳選して習い事をスタートする家庭もあります。でも確かに、やってみないとわからないですもんね。

実際にやってみることは、大きな体験です。やってみたら違ったなんて、大人でもありますよね。好きだと思ったけど向かなかった、面白くなかったという気持ちは、自分にとっての正解なので、大きな学びです。

向いてないことがわかることも、大きな学び

――向かないものを見つけることは、向いているものを見つけるための通り道、と考えると良いのでしょうか。

その通りだと思います。いろんなことを試すのって単純に楽しくないですか?

パッションを探す過程こそ、すごく楽しい。パッションが見つからなくて辛いという方もいますけど、見つけている途中って、選択肢がすごく広がっている状態。見つかっていない時こそエンジョイして欲しいですね。

――いろいろとやってみるという体験そのものが子どもにとって良いですよね。

その通りです、チャレジする心が大切。娘はいろいろと取り組んだ結果、バレエというパッションを持てるものを見つけました。バレエには夢中になって取り組んでいました。

バレエの舞台で踊る長女スカイさん

お金よりも、親の愛をかける

――日本では教育にはお金がかかる状況が生まれていて、格差が問題になっています。塾や習い事に通わせることが難しい家庭もあります。

お金をかけなくてもできることはたくさんあります。娘も塾に行ったのは、大学入試のためのSAT対策の4回だけ。それはコツが必要だったから。なので、お金は全然かけてませんよ(笑)

お金ではなくて、親の愛。これならだれでもできるし、みんなたくさん持っている。

いままでって「子どもにやらせる子育て」ですよね。親は「◯◯しなさい」とやらせる立場でした。でも、非認知能力を育む子育ては真逆。

子どもが「なんで?」と聞いてきた時に、親が「なんでだろう?一緒に調べてみよう」という姿勢が大事。手をかけてあげることで、子どもも自ら調べるようになっていきます。

何かができたから認めるのではありません。テストがよかったからすごい!テストが悪かったらダメ!ではなく、どちらもその子なので、すべてをあるがままに受け止める。

「できなく当たり前」と思うと、子どもをほめられる

――日本人は謙遜する性質がありますが、アメリカの親は「うちの子は素晴らしいのよ」とオープンに言う文化があるようですね。それもアメリカのお子さんが自信に満ちていることが多い理由でしょうか?

その通りです。私も常々、謙遜はやめましょうと言っているんです。子どもがほめられても、目の前で「いやー、そんなことなくて。うちの子はここがダメで…」なんて言っちゃったら、子どもは謙遜の意味がわからないので、そのまま受け止めてショックですよね。

そういう時は、まずは「ありがとうございます!」。そのあとに「お宅のお子さんもこんなところが素晴らしいですよね」と付け加える。これでいいんです。子どものいる場で謙遜はなし!

自分が褒められた時も同じように感謝と褒め返しが効果的ですよ。

美徳の考え方って美しいですが、グローバル社会では通用しません。謙遜すれば「あなたはそこまでの人なのね」と思われてしまいます。

「みんなと同じ」「謙遜」この2つを乗り越えれば、日本ってものすごく生きやすい社会になるのではないでしょうか。

素直に喜べば、褒めた方も嫌な気にならないですよね。褒められたら「わー、うれしい!ありがとうございますー!」とハッピーに返したらみんな幸せになる気がします。

ーーボークさんに褒め方と喜び方を学びたいですね。ボークさんのように明るく大きく褒められるようになるには、どうしたらいいですか?

まず前提を変えればいいんです。「できて当たり前」から始まると、できないことに目がいきます。「できなくて当たり前」の前提から入ると、できたことが「わー!すごい!」になるんです。

これって重要ですよ。子どもはみんなできないところから始まるので、ちょっとでもできたことがあると褒められる。そういうスタンスでいないと、窮屈になっちゃいますよね。

子どもに対して理想や期待はあるでしょう。それは親の問題なので、自分の心に留め、まずはその子をそのまま受け入れる。「生まれてきてくれてありがとう」と生まれた瞬間に思った気持ち、それを持ち続けることが大事ですね。

「自分はここにいていいんだ!」と安心して思える、これが何よりも自己肯定感の要です。

――良いお話をどうもありがとうございました。ボークさんのように、パッションを表現しながら、子どもを褒められるようにしていきたいです。


プロフィール:ボーク重子(ぼーく・しげこ)

1965年生まれ。福島県出身。ライフコーチ。著書に「『非認知能力』の育て方」(小学館)や「世界最高の子育て」(ダイヤモンド社)など。

関連記事:ボーク重子さんに聞く 第1回:子どもを伸ばす「非認知能力」って、どんな力なの?

編集協力:秋音ゆう

みらのび編集部
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