2021.04.14
学びインタビュー 平岡妙子

第5回:「なんだって出来る!」社会とつながる「探究学舎」の子どもたち

「夢中になる力」第5回:「なんだって出来る!」社会とつながる「探究学舎」の子どもたち

「子どものためのコミュニケーションカフェ」を開いた狩野詩歩さん

「探究学舎」(東京都三鷹市)の学びから「好き」を見つけて、探究心を伸ばした子どもたちがたくさんいます。今回は、中学生になっても多くの人から学び続けて、「悩む子どもの役に立ちたい」と成長している子を紹介します。探究心を伸ばして飛躍するためには、どんなことが必要なのでしょうか。宝槻泰伸代表が子どもたちの成長について語りました。

起業した子の体験から刺激 「子どもだってなんだって出来る」

東京都日野市の中学2年生の狩野詩歩(しほ)さん(13)は、小5で探究学舎の「経済金融編」の授業を受けた時、起業した子どもの話を聞いて大きな刺激を受けました。「子どもだってなんだって出来るんだ」という気持ちになり、自分も何かやってみたいと行動を始めました。プレゼンテーションの入門講座を受け、子どもがレモネードを売ってビジネスを体験するプログラムにも参加しました。学校の外で出会う、社会活動で活躍している大人たちは「子どもだからダメ。子どもにはムリ」と言いません。学校の授業以外の学びの中から、狩野さんは自分の思いを表現する体験に楽しさを感じるようになりました。

小6だった2020年1月5日、東京都立川市で「子どものためのコミュニケーションカフェ」を開きました。最初は母親のフェイスブックを使って呼びかけましたが、予約はたった1人。これではダメだと思い、探究学舎に毎日通い、勇気を出していろんな授業の冒頭で、「カフェを開きたい」と思いを伝えるプレゼンをして参加を呼びかけました。

「悩んでいる子どもが来て、話をする場を作りたいんです。ぜひ、来てください」。

次第に予約が増え、当日は40人以上が集まりました。時間帯を3回に分けて開催し、にぎやかなカフェになりました。狩野さんがカフェをやりたいと思ったのは、自分自身が学校で主張しすぎて、人間関係で悩むことがあったからです。そんなとき、誰かと悩みを相談し合える場があると良いな、と思いました。

レモネードを売る子どもカフェでインターンをした狩野さん

「やりたいことを全力で」 周りの人に頼ることも学ぶ 

中学生になってからも様々な講座に参加して、新しいことを生み出す面白さを学んでいます。狩野さんは「いまは、自分の意見を言うのは良いことなんだ。やりたいことは全力でやろう」と感じています。将来は「子どもの起業家のためのシェアオフィスを作りたい」など、夢が広がっています。

2021年1月に参加した地元のビジネスコンテストでは、「50年後、2070年の子どもたちを変えたい」とプレゼンしました。いままで、カフェなどの活動も、いろんな大人に助けてもらってできるようになりました。やりたいことを実現するには、周りの人に頼ればいいということも学びました。コンテストのプレゼンでは、最後にこう語りかけました。

みんな一緒なら、なんだって出来るんだ」。

狩野さんのプレゼンは参加者から絶賛されて、優秀賞と審査委員賞をダブル受賞しました。

【母親の明子さんの話】 娘が小さい頃は、「子どもはやりたいことばっかりやっていたら、だめなのでは…」と思っていました。親としては、「こういう子どもになってほしい」という思いが強くて、「ピアノのレッスンは毎日きちんとやらせたい」「YouTubeを見る時間は制限させたい」などと考えていました。でも、制限すればするほど、やりたくなる気持ちが強くなるようでした。だらだらと好きなことばかりやっている姿に、親としては葛藤がありました。

だけど、娘がいろんな集まりに参加して、やりたいことを表現するようになると、周りの大人の人たちが「いいね、やってみたら」と応援してくれました。娘を受け入れて、共感してくれる人が多くなると、様子が変わってきました。自信がついてきた頃から、だんだん自分で制限できるようになりました。

いろんな葛藤がありましたが、いまは私も子どもには好きなことをやらせた方が良いんだなと思えるようになりました。自分で考えられるようになるからです。娘に声をかけてくれた人たちのおかげです。

探究学舎の経済金融編で外国の本物の紙幣を触って喜ぶ狩野さん。後ろは、宝槻泰伸さん他の子と比べない。ささやかなことでも認めて、我が子の興味を見つける

【探究学舎の宝槻泰伸代表の話】

ここに登場した探究を続けた子どもたちは、本当にすごいけれど、それは環境の力が大きいと思います。周りにいるどんな人に出会えるのか。出会いから、さらに体験が生まれる。詩歩ちゃんも絶えず動いていて、そこからいろんなつながりが出来てくる。動いていると体験がやってきて、それが栄養になり新しいチャンスを運んできて、また育っていけるんです。じっと待っていても、体験はやってこない。

でも、ここまで探究を極めていける子どもや親は、特別ですから。「うちはここまで出来ない」「うちの子はこんなふうにいろいろと調べたりしないし」とか、うらやましく思ったり、ねたましく思う気持ちは出てくると思うんです。心の中で、勝手に他人と自分を比較してしまうことは誰にでもあります。

自分のできることから、始めてください。子どもの得意なところややれていること、足元に光を当てて照らしてあげる。「うちの子だって皿洗いよくやってくれるし」「元気よくあいさつできるのよね」とか、ささやかなことを認めてあげてください。

脚下照顧」(きゃっかしょうこ)という言葉があります。禅宗のお寺の玄関によく飾られているのですが、自分の足元をよく見つめようという意味です。上ばっかり見ていませんか?ないものねだりせずに、子どものいまの姿をよく見てあげてください。足元に光を当てて、照らして愛(め)でる。それが自信につながります。

子どもの興味をよく理解して、そそのかす

大人のやってあげることは、子どもが「楽しそう」「面白そう」と興味をもてるように、そそのかす提案をすることですね。

美術館や科学館に連れて行くことや図鑑を買い与えるだけでは、まだ足りない。「あ!それ楽しそう!」ってワクワクする気持ちをかき立てられるかどうか。知りたくなる、やってみたくなるような仕掛けを作ることです。

例えば、人が好きで、みんなに話をするのが好きな子がいる。親は落ち着いてじっくり調べることもやらせたいと思っている。そうしたら、子どもプレゼン大会のような場を見つけてあげて、ちょっと興味がありそうな展覧会に誘う。親も見て欲しいなと思うものでも、葛飾北斎展でも何でも良いんですよ。「これは発表するネタになるよ!」とか言って、やる気が自然と出てくるように、そそのかす。ただ、美術館や科学館に行こうというだけでなくて、何か目的があれば自分から調べたり探究したりする。うまく発表できたら自信につながる。

探究学舎の「経済金融編」を受けさせたいと思ったら、「これ受けると、すごいお金持ちになれるらしいよ」とか言うと、「えっ、まじ!? じゃぁ、行ってみようかな」ってなる(笑)。

誰にでも効く「万能薬」はないけれど、自分の子に効く「特効薬」はある

僕の父親は、3人の息子たちに本を読ませたかったので、「1ページ読んだら1円やる」って宣言したんですよ。俺たちお金欲しかったし、必死で本読んだもん。きっかけは単純かもしれないけど、それが読書の面白さに気がつくことにすごく役に立った。

そのやり方が良いかどうかは別にして、家庭ごとのやり方がある。正解はなくて、組み合わせ方は無限にある。そういう工夫を、親も面白がって出来るかどうかということかな。

誰にでもうまく効くような万能薬はないのだけれど、自分の子どもには効く特効薬はある。親が、自分の子どもが何に興味があるのかをよく見つめること。そして、我が子に合ったやり方を作り出していくことが必要なのではないでしょうか。

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平岡妙子
平岡妙子

朝日新聞社に記者として入社し、社会部、AERA編集部や武蔵野支局長など。教育担当が長く、主に小中学校の学力調査や受験業界などを取材。小学生の時には合唱団で歌っていました。学校の取材で子どもの歌声を聞くと、涙腺がすぐゆるむ。大学生の長男と小学生の長女がいます。

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