2021.04.28
学びインタビュー 桜木奈央子

「math channel」代表・横山明日希氏と語る 「子どもを算数好きに育てる秘訣!」

ガミガミ言わなくても勉強する子が育つ「戦略的ほったらかし教育」を発信する岩田かおりさん。招待制の音声配信SNS「Clubhouse(クラブハウス)」でゲストを招いた対談連続企画「岩田かおりのここだけの教育話」を、ファシリテーターの教育系ライター洪愛舜さんとともに開催しています。3月18日は、数学の楽しさを世の中に伝える「math channel」横山明日希先生を再び招き、「子どもを算数好きに育てる秘訣!」について話しました。Clubhouseで事前に参加者に許可を得たうえで、対談内容を記事化しました。

算数の楽しさを伝える

岩田かおりさん(以下、敬称略):横山明日希先生には以前にもこの対談企画にお越しいただきました。今回再登場です。前回の配信で「明日希先生の計算カードゲームで子どもが楽しんで計算をやるようになった」という喜びの声が届いています。

横山明日希先生:算数や数学の楽しさを伝えるmath channel代表の横山明日希です。
算数の教室を運営しています。代々木に教室がありますが、オンラインでもやっています。また、商業施設や科学館で算数イベントやクイズラリーを通して、今までと違った形で算数を届ける活動をしています。
「どうやったら、子どもたちが算数をもっと好きになれるか」という思いで、カードゲームやパズルなど算数の教材を作っています。算数の講師というより、math channelは「算数コンテンツの企画クリエイターの集団」です。

岩田:子どもってちょっと「しかけ」をすると、すぐには反応しなくても何日かしてから興味を持つこともありますよね。

横山:この前、うちの小学2年生の生徒さんが検温したら36.4度だったんです。そしたら「これって、12月30日だよね」ってその子が言いました。意味わかりますか?

岩田:え!? わかりません。どういうことでしょうか。

横山:1年が365日だから、364(36.4度)は大晦日の1日前の12月30日だというんです。僕、感動しちゃいました。

岩田:これは面白い!! 発想がクリエイターですね!

洪さん:子どもが「答えがないこと」を自分で考えるってすごいですよね。まさに今日の「算数好きに育てる秘訣」というテーマにつながってくると思います。

算数を好きになる確率を上げる

 math channelが考案・開発した九九のカードゲーム「kukupon!」で遊ぶ岩田かおりさんと横山明日希さん。大人同士の対決ですが、予想以上に盛り上がりました。

岩田:今日のタイトルを私は「算数好きに育てる秘訣」とつけましたが、明日希先生は「算数の楽しさを伝える」とおっしゃっていますよね。
あえて「楽しさを伝える」という言い方をしているのは、どうしてなのでしょうか。

横山:「算数を好きになってもらう教室をやっています」など、自分の活動をどんな言葉で伝えるか、僕もいろいろ考えました。
「算数を好きになる・楽しむ」は、子どもの状態のことを表しています。たしかにそれを目指したいけど、一発でそれが出来ると思っていません。
じゃあ、確実に出来ることは何かなと考えてみたら、「僕たちが楽しいと感じる算数の話」は出来ると思ったんです。

洪:相手が楽しむかどうかという前に、まずは伝える側が楽しいと感じる話、ということですね。

横山:そうです。僕たちが楽しいと思っても100%それが伝わるわけじゃないけど、「楽しい」の繰り返しや要素が積み重なって算数が好きになる子もいるし、逆にひとつの話でビビっときて好きになる子もいます。
とにかく僕たちは「算数好きになる確率」を上げるためにさまざまなことをやっています。

岩田:確率…。そこにも算数が入っていますね(笑)

洪:算数って、学校の勉強から見える顔、そろばんなどの習い事から見える顔のように、一方からしか見えていないのかもしれませんね。でも、左から見た顔は好きじゃないけど正面の顔は好きかも、ということはありますよね。
そんな風に算数をさまざまな方向から見せているのが明日希先生です。

算数の魅力にどう出会えるのか

 算数といろんな出会い方ができるように、math channelではたくさんの種類の算数教材やおもちゃをそろえているのだとか。

横山:僕たちがオンラインでやっている算数パズル教室では、学校では触れにくい問題をやるようにしています。気がついたら算数の魅力に触れているという内容です。

洪:オンラインでも楽しさを体験する、ということについては、前回詳しくお話しいただきました。

横山:算数は、問題が解けたら楽しいし、学校でも入試でも点数で評価されます。では、それ以外に算数の何が「楽しい」のでしょうか。

洪:確かに、問題を解けたときの快感、みたいなやつはありますよね。でも、問題が解けなくても楽しい、ということが算数であり得るんでしょうか?

横山:それが、あるんです。例えば、子どもが脳みそに汗かいてやりきったことを「それ、すごいね」と行動を褒められたり、おもしろい問題を考えたことをクリエイターとして評価されたりしたときなど。math channelでは、そんないろんなゴールを大事にしています。

岩田:なかなか保護者には伝わっていないのですが、そういう「余白」を残している教室や習い事の方が、終わったあとにじわじわ考えたくなるし、自分で考えたという達成感につながりやすいんですよね。

横山:僕たちが大切にしているのは「僕たちはなぜ、算数好きになったのか」、そして「算数がなぜ、嫌になったのか」ということです。その体験を、いろんな人の要素を入れていかに再現するか。

洪:「好き」だけじゃなくて「嫌」も見ていくことで、体験の幅が広がるんですね!

横山:math channelの教室に来たら、棚にある算数の本をひたすら読んでいる子、算数パズルで遊ぶ子、先生とおもしろい数学の話をしたい子など、各々が算数を楽しめる空間にしています。

洪:全部楽しそうでどれをやるか迷ってしまいそう(笑)。

横山:あれこれ詰め込んではいるけど、押し付けることはありません。僕たちは毎月たくさんの新しい教材仕入れていますが、たくさん用意して、その中でひとつだけでも楽しく取り組んでくれたらいいなと思っています。

岩田:算数と苦しい出会い方をしている子どもも多いので、楽しい方のアプローチも経験してほしいですよね。

横山:昔、500人くらいを「数学が好きになった人と嫌いになった人」に分けてアンケートをとって、何がきっかけで数学を好き/嫌になったのか聞きました。

洪:それ、気になります! 我が子が算数嫌いにならないためにも参考にしたい(笑)。

横山:嫌いになった人のわかりやすい理由3つは、「気がついたときから嫌い」「学校の授業がきっかけで嫌になった」「テストの点数が悪かった」。これくらいしか理由がありませんでした。

洪:この3つ、嫌いになる原因としてわかりやすいですね!

でも、好きになった理由は多様でした。「気がついたときから好きだった」「学校の授業、本や番組など」「学校の先生、塾の授業、親、友人がきっかけ」など、みんなバラバラ。だから僕たちはいろんな投げ方をしようと思いました。

岩田:好きになるにはいろんなアプローチがあるということですね。嫌いになるのも好きになるのも、本当に出会い方ですよね。

「間違えても大丈夫」という場所の大切さ

横山:僕たちの講座では、1つの問題にじっくり取り組み、学校ではできないようなぜいたくな時間の使い方をしています。
時間をかけて2、3問のおもしろい問題を掘り下げたり、自分で算数の問題を作ったりする楽しみを伝えています。

岩田:すごくいいなと思うのが、ひとつの正解を求めるのではなく、算数をクリエイターとして楽しませていること。算数博士になってほしいというよりは、算数を通してクリエイトを体験してもらえたらと思います。

今、不安定を楽しむしかない時代に突入しているから、正解を求めると苦しいですよね。でも、算数で答えがひとつじゃないことを経験すると、人生に代用できるような気がします。

洪:実はうちの子たち、明日希先生の算数パズル教室を10か月くらい受けているんですよ。
3か月くらい前からようやく、「答えはなくてもいい」「答えは作り出したらいい」と考えられるようになってきたと感じます。間違えることがこわくなくなったみたい。

岩田:きっとそれが、この不確定な時代を楽しむ一歩ですよね。
「間違えても大丈夫」という場を経験することが、今の教育には必須で、この体験がこれからの時代を生き抜く力にも繋がると感じています。

横山:算数や数学だけで閉じるのではなくて、僕たちは、算数や数学を使って子どもたちが世の中とつながる体験ができるように意識しています。そのために大切にしていることは「自分で考えよう」「いっぱい悩もう」「工夫していろいろ試そう」です。

間違えてもいいから、子どもたちが自分の好きなことを話せて、それをみんなで楽しめるような算数の「場」を作ることを大事にしています。

プロフィール
横山明日希(よこやまあすき)
math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。2012年、早稲田大学大学院修士課程修了(理学修士)。数学応用数理専攻。大学在学中から、数学の楽しさを世の中に伝えるために「数学のお兄さん」として活動を開始し、これまでに全国約200カ所以上で講演やイベントを実施。2017年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにおいてサイエンスアゴラ賞を受賞。著書に『笑う数学』『笑う数学 ルート4』(KADOKAWA)、『文系もハマる数学』(青春出版社)などがある。

岩田かおり(いわたかおり)
株式会社ママプロジェクトJapan代表。ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる親子講座『かおりメソッド』『天才ノート』主宰。子ども教育アドバイザー。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の想いから、独自の教育法を開発。3人(1男2女)の母。

洪愛舜(ほんえすん)
子育て・教育系ライター。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。編集プロダクションecon主宰。目黒駅前新聞編集長。著書に『もやもやガール卒業白書』(MMR)、絵本『すき!I like it!』(教育画劇)がある。立命館大学理工学部卒。1女1男2児の母。

「岩田かおりのここだけの教育話」の記事一覧

関連記事:子どもが勝手に伸びる「天才ノート」の作り方

桜木奈央子
桜木奈央子

写真家、ライター。2001年からアフリカ取材を続ける。著書『世界のともだち ケニア』『かぼちゃの下で』。雑誌や新聞にフォトエッセイや書評を執筆。「cinema stars アフリカ星空映画館」代表。最近の趣味は息子2人のサッカー撮影。小学生の頃は本の虫、星野道夫さんに憧れ17歳でひとり旅に。

関連記事 Related articles

新着 New!

お住まいのエリア・ジャンル・対象年齢から検索!
習い事教室を探す