7歳以上
織り機でオリジナルの布・マット・マフラー作り 豊かな感性養う

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01
自分のペースで織り機を動かし、オリジナルの布づくり
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02
1コマの時間制限なし 月会員になれば、いつでも通える
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03
グループで作品展や、地域のイベントにも参加できる
心が動いたまま、感じながら織る

工房の棚に並ぶ糸。素材や色が豊富で、何種類でも選んで織ることができる
東京・吉祥寺と自由が丘の「手織工房じょうた」では、7歳以上を対象に「さをり織り」の教室を開いています。主宰するのは、城達也さん。城さんの祖母みさをさんが、さをり織りの創始者です。
取材では、吉祥寺工房を訪ねました。部屋の中には、足踏み式の織り機がたくさん並び、棚には、色とりどりの糸が。大きな窓からは、うっそうとした木々が眺められます。何かを作りたい気持ちが高まるような心地良い空間です。
さをり織りの特徴は、自分の好きなように自由に織れること。機械織りのような正確さや緻密さは必要なし。一人ひとりが持つ個性や感性を生かすこと、頭の中で計算せず心が動いたままに取り組むことを大切にしています。何を作るかは決めず、次にどうするかを感じながら織ります。たとえ、でこぼこになったり糸が飛んだりしても、間違いや失敗にはならないそう。「もっとやってみよう、と面白くできることがいっぱいあるし、それがデザインにもなる」と城さん。自分が思っている以上のものが、どんどん作られていくのが魅力です。
子どもが参加できるコースは、月会員、1日体験の2つ。どちらも1コマの制限時間はありません。工房が開いている間に、休憩をはさみながら、自分のペースで織ることができます。
好きな糸を選び、自分らしさを作品で表現

「さをり織り」の織り方は作り手の自由。城達也さんの息子さんの作品は、色鮮やか
月会員になると、週に何回でも工房に来て織ることができます。始めの3回ほどはタテ糸を作り、その後は自由。好きな幅で、さまざまな織りや簡単な仕立てに取り組めます。
1日体験では、あらかじめ黒のタテ糸が用意されています。織る幅は30センチ。初めてでも4時間ほどでマフラーほどの長さが織れます。
織り方は子どもでも簡単。まずは糸選び。工房には、綿、ウール、シルク、リネン、カシミヤなど、さまざまな素材・色の糸巻きが約2000本もあります。そのほとんどが紡績工場の残糸だそう。質の良さに加え、値段も手頃。糸は何種類でも使ってOK。材料費はでき上がりの重さで計算し、マフラーくらいのサイズで1000円前後です。
続いて織り機を動かします。タテ糸を準備した後、ヨコ糸をボビンに巻き付け舟形のシャトルにセット。操作は、①片方のペダルを踏むとタテ糸が上下に開くので、その間にシャトルを通す、②ペダルを踏み換える、③筬(おさ)を手前に引く、これを繰り返します。
糸を途中で変えたり、別の素材を間にはさんだり。空気を一緒に織り込むようにすると柔らかさが生まれます。進めるうちに織る人の自分らしさが作品に自然と出てきます。
城さんには2人の息子さんがいます。2人とも3歳ごろから誰に教えられることもなく、見よう見まねで織り始めたそう。息子さんの作品には鮮やかな色が多く入り、伸びやかさを垣間見るようでした。
価値観を広げ、自分の目で見て考える人に

会員たちが織ったマフラーは、ゾウの「はな子」像に巻かれた(左)。城達也さんの作品(右上下)
工房での織り機体験は、ユニークな個性や感性を発揮することにつながります。指導のスタンスは、「芽が出るのを待つ」「教えないで引き出す」こと。スタッフは、困った時にはサポートしますが、色使いなどはアドバイスしないそう。さをり織りを通じて、感性を使う力が育まれると、普段の生活でも価値観の尺度が広がります。「子どもが、物事をこうだと決めつけずに、自分の目で見て考えていけるようになる」と城さん。
作品は、ランチョンマット、マフラー、直線裁ちのブラウスやベストなど、多岐にわたります。無心になって織り機に向き合ううちに、自分らしさをアートの形で表現する力が育ちます。
教室では、工房展を年1回開くほか、年に数回、「仕立ての集い」を開催しています。ここでは、みんなが自分の作品を見せ合い、仕立てた服を他の人が身につけることも。グループで学び合うことで自分を客観視し、多様性を実感することにもつながるでしょう。
ものづくりを通して、探究心やクリエイティブな力も身につきます。工房にはミシンがあり、織った後の作品づくりも楽しめます。見学時は、城さんが作った織り物のパネルやお面も展示されていました。
冬のイルミネーションの時期には、吉祥寺駅前に建つゾウの「はな子」像に、月会員のメンバーやスタッフがマフラーを織り上げて巻いています。最近では、最年少の会員、小学1年の男の子も参加し、暖かさと彩りを添えました。
「感性は、誰でも持っている」

「手織工房じょうた」主宰の城達也さん。吉祥寺の「糸モノまつり」を企画するなど、イベントにも積極的
さをり織りは、1968年、みさをさんが、織り機を自作して始めました。家業は、織り機の部品を扱う会社。城さんの父・研三さんは、母のために、簡単でコンパクトな手織り機を開発し、製品化しました。今は、関連する部品や糸なども販売し、「じょうた」でも仕入れています。
城さんが、さをり織りを本格的に始めたのは、社会人になってから。会社の社員寮の自室に、織り機を送ってもらったそうです。叔父の教室を7年手伝った後、「もっと多くの人に伝えたい」と、2007年に工房を立ち上げました。
自然豊かな吉祥寺の工房は、2度の引っ越しを経て見つけた場所。毎年、地元で開かれるイベントにも積極的です。11月開催の「糸モノまつり」は、城さんが企画。手芸関係の店やギャラリーだけでなく、縄文式土器や、糸や織りをイメージした食べ物なども出店が可能とのこと。音楽祭の実行委員長を務めた経験もあるそうです。
手織りの上達のコツは、自分が作りたいもののイメージについて、こだわりを捨てること。織る人が、感性を生かし始めた時に、城さんも喜びを覚えるそうです。学んだ人からは「じょうたでなければ、続けていなかった」との声が聞かれます。
「感性は誰でも持っている」と城さん。例えば、歩いている時に目にした緑の多さや空気の変わり方、夕日の美しさに心が動かされるのも感性のひとつであり「感じる力」だと教えてくれました。
手織工房じょうた 自由が丘工房のコース情報
月会費コース
対象となるお子様
受講日
10:00~17:00の間、好きなだけ織ることができます。
※月曜日、木曜日、第一日曜日、祝日は工房がお休みです。
※混む曜日に関しては、予約をいただく場合があります。
1日コース
対象となるお子様
7歳以上
受講日
10:30~17:00の間、好きなだけ織ることができます。
※月曜日、木曜日、第一日曜日、祝日は工房がお休みです。
手織工房じょうた 自由が丘工房の体験会・説明会
費用
見学:無料。自由に見ていただけます。
体験:1日コース 3,850円
※別途、制作物の糸代がかかります(例:マフラー糸代 700円~1,000円/1本)。
概要
通常の1日コースでご体験いただけます。
通常、工房内では保護者さまは付き添いではなく、お子さまと一緒に織っていただいています。
お子さまお一人で体験いただく場合、途中、お子さまが外に出て一緒に食事をする、などは可能です。
手織工房じょうた 自由が丘工房の地図・アクセス
所在地
〒152-0035
東京都目黒区自由が丘1-13-4-402
アクセス
自由が丘駅より徒歩2分。
自由が丘駅北口を出て右手(スターバックスが見える方)へ行き、突き当りを右折。踏切の手前を左に曲がり、カフェの隣にある白い大きなマンションの402号室です。1階にスペイン料理屋、ハンバーグ屋、不動産屋があります。建物の左側に入口があり、奥にエレベーターがあります。
手織工房じょうた 自由が丘工房の基本情報
教室名
手織工房じょうた 自由が丘工房
運営者
株式会社手織工房じょうた
ジャンル
対象となるお子様
7歳以上
入会後の費用
■月会費コース
・入会金 11,000円
・月会費 11,000円
・材料費(織りあがった時に素材と重さで計算します。ウールのマフラーだと1,100円くらい)
■1日コース
・1日織り放題 3,850円
・材料費 1,100円程度
こだわり条件
振り替えあり / 親子参加あり / 土日あり

親目線でここがうれしい!
手織りは、子どもが簡単に取り組める習い事だというのが一番の発見です。気持ちを落ち着かせ、のんびりと、そして自由に織る体験はとても豊か。「1コマ」を決めていない理由について、城さんは「時間が決まっていたらせわしない。歩いている最中にきれいな景色に出会ったら、深呼吸してから来た方が、その人の心にはいい」と話していました。吉祥寺の工房は、目の前が公園なので、気分転換に散歩したり、遊んだりするのもいいですね。(小島泰代)